TSMCが日本の補助金よりも欲した"2つの取引先" 台湾企業の失敗からラピダスが学ぶべきこと

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ただ、ことラピダスについては、日本の皆さんにシビアに伝えたいことがあります。

日本では先端半導体を作るプロセス技術が途絶えているため、ラピダスはIBMからの技術移転を選びましたよね。実はIBMからの技術移転は、台湾を代表する半導体メーカーも選んだことがあります。しかし失敗に終わっています。しかも企業成長を決定的に遅らせるほどの大きなつまずきとなりました。

その企業はUMC(聯華電子)です。UMCはTSMCと同様、台湾政府の支援で生まれました。当初のビジネスモデルは少し違っていたのですが、今はTSMCと同じ半導体受託製造の世界的大手です。しかもUMCの創業は1980年とTSMCより7年早い。

ところがUMCは2000年ごろを境に、TSMCに技術や業績の面で大きく引き離されてしまいました。これはUMCがIBMからの技術移転を選んだ影響が大きいと私は考えています。

2000年ごろ、当時の最先端プロセス技術である0.13マイクロメートル(130ナノメートル)をどうするかという局面で、UMCはIBMと共同開発しようと決めました。実はIBMの技術は、TSMCも検討しました。しかし当時の研究開発幹部が「IBMの工場にTSMCの技術者が行くのではなく、台湾の自社工場で研究開発をしなければ、開発成果を量産段階に反映できない」と考え、自主開発の道を選んだのです。

結果として、TSMCは2000年の研究着手から1年半で開発に成功。UMCはそこから2年遅れました。そしてこの後、TSMCとUMCの差はどんどん開いていったのです。

IBMからは学べないことがある

――ハイテクの世界で、2年分の技術差は致命的です。UMC同様、ラピダスもIBMからの技術移転でつまずくリスクも出てくるかもしれない。

過去に台湾企業が失敗したからと言って、ラピダスも「絶対にうまくいかない」とは断言しません。ただ台湾企業の経験を踏まえて、日本政府とラピダスにはIBMの強みと弱みを冷静に分析してもらいたいのです。

IBMが半導体技術の研究に強みがあることは事実です。しかしラピダスがやろうとしている半導体の受託製造とは、「顧客へのサービスとして半導体を製造する」というビジネスなのです。

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