「人に迷惑をかけない」が行きすぎる社会への懸念 坂東眞理子さんが語る「孤立」と「自立」との違い

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「他人に迷惑をかけない」というのは日本人の大きな美徳で、だから日本社会は清潔で安全だと、世界中から高く評価されています。

その反面、「迷惑をかけない」ことにこだわりすぎると、息苦しくなります。

日本では「人に迷惑をかけてはいけない」という気持ちが強すぎる傾向があるようです。それが、お互いが迷惑をかけたり、かけられたりするのを許さない社会をつくっているように思えてなりません。

「自立」と「孤立」は違う  

もちろん、なかにはマナーをわきまえず、騒音をまき散らしたり、ごみをまき散らしたりして周囲に迷惑をかけている人もいます。しかし多くの人はマナーを守り、周囲に迷惑をかけないように気をつけながら暮らしています。

公共の場でマナーを守るのはとてもよいことですが、自分がどんなに困っても、助けを求めたら人に迷惑をかけてしまうと考え、がまんするのはやや行きすぎです。

その結果、解決できない問題に直面しても、助けを求めるのを躊躇して、自分だけで抱え込んでしまうのです。助けを求めてもみな忙しく、時間にもお金にも余裕がないので、助けてはくれないと思い込んでいるからです。

最近、とみに語られる「自己責任」という言葉が、これを象徴しています。どんなに困っても人に助けを求めると迷惑をかけることになる、とされるのはつらいものです。

「自立」といえば立派に聞こえますが、困ったときに誰からも手をさしのべてもらえない個人は「自立」しているのではなく「孤立」しているのではないでしょうか。

私は長い間、これからの日本女性は親や夫に保護され、相手の意向に従って生きるのではなく、自立して生きる経済力と精神力を持たなければならないと考えてきました。

しかし、「自立」だけを目指しすぎると、かえって孤立を生んでしまうのではと、内心、危惧しています。

孤立と自立は、どこが違うのでしょうか。

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