ピーチがエアバス機を購入する重大な意味 もはや「LCC」とは呼べない?

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もちろん、ピーチの後ろには38.67%を出資するANAホールディングスという筆頭株主が控えている。レガシー・キャリアの後ろ盾がないとはいえないのだが、2012年3月に国内初のLCCとして関西国際空港を拠点に就航したピーチは、そもそもまだ歴史が浅い。それでもエアバスがピーチからの直接購入を了承した背景にあるのは、「信頼」だ。エアバスは「いつ潰れるかわからない航空会社ではない」とピーチを認めたことになる。

A320購入を決め、握手するジョン・リーヒー・エアバス社顧客担当最高業務責任者(COO、右)、ピーチ・アビエーション井上慎一CEO(中央)、ファブリス・ブレジエ・エアバス社社長兼最高経営責任者(CEO)

ピーチ側も、リースよりもリスクが高い直接購入に踏み切った理由がある。その分、なんらかのインセンティブをエアバスから得ている可能性があり、また直接購入する資金調達ができるほどの経営体力が備わってきたという証しでもある。

ピーチの業績は順調だ。6月23日に発表した最新決算である2015年3月期単独業績は本業の儲けを示す営業利益が28億円と、国内LCCとして初めて営業黒字化した2014年3月期(営業利益20億円)に続く2期連続の黒字。昨年、パイロット不足に伴う計画減便の影響があったにもかかわらず、利益を拡大した。平均搭乗率は85.9%と前の期から2.2ポイント伸ばしている。突発的な出来事がなければだが、今年度末(2016年3月)には累積損失(2015年3月期末7億円)の解消が見えてきている。

ピーチはこの8月をメドに、羽田-台北(桃園)便の運航を開始する見通しと、主要なメディアも報じている。深夜早朝(夜22~朝7時)時間帯の発着ながら、国内LCCとして初めて羽田に乗り入れる。

国内3拠点態勢に向けて布石

羽田乗り入れだけではない。ピーチはこの3月末に成田空港と札幌(新千歳)、福岡をそれぞれ結ぶ路線を開設、すでに拠点化している関空、那覇(沖縄)に続く国内3拠点態勢の構築に向けて布石を打った。2017年夏までに、仙台空港を新たな拠点にする戦略も表明している。

こうした実績と勢いがエアバスの「信頼」を勝ち取った理由だろう。「信頼」さえクリアしてしまえば、運用コストや整備コストを下げられる新造機の導入は、LCCにこそふさわしい。直接購入ではないが、最近では、新型A320はLCCの定番となっている。

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