消費者の関心は企業の想いへの共感に変わった 所有の喜びだけではもうモノは売れない

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ブランドに関わるすべてのデザイナーが連携し、ブランドを共創する時代になってきているのです。

贅沢を意味しなくなった「ブランド」

➃表層から根幹へ

「所有より意味を求める」という価値観の変化に伴い、ブランドも「誰が、どのような思想で、何のためにつくったブランドなのか」が問われるようになりました。

消費の傾向が、所有から意味に変化した背景には、消費の成熟化があると言われています。

かつては日本もモノが足りない時代があり、商品やサービスの機能的な価値で、生活が豊かに変わっていきました。しかし、現在は、生活に必要なモノはほぼ行き渡り、これ以上の利便性を追求することが難しくなっています。

そのため、機能性だけでは得ることができない、体験や経験、そしてブランドの持つ意味が問われるようになったのです。機能的な価値だけではない、情緒的な価値が求められるようになりました。

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ブランドの根幹にある思想は短期間でつくることはできませんし、上辺だけを取り繕ってもすぐに見破られてしまいます。「サステナビリティへの向き合い方」「地域貢献」「ダイバーシティ」「歴史・文化伝承」など、ブランドとしての社会貢献的側面を明確にし、存在意義を持って運営していくことが求められているのです。

かつてはブランドと言うと、贅沢品だと捉えられている時代もありましたが、今の「ブランド」とは必ずしも贅沢を意味しません。

見た目が豪華で美しいことよりも、ブランドの根幹にある思想に価値が見出される時代に変わったのです。

八木 彩 アートディレクター

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やぎ あや / Aya Yagi

1985年兵庫県生まれ。武蔵野美術大学 視覚伝達デザイン学科を卒業後、電通へ入社。クリエーティブ局に所属し、クラシエ、資生堂、大塚製薬、サントリーホールディングス、日本コカ・コーラ、カゴメ、ファーストリテイリング、三井不動産、三井住友銀行など様々な企業の広告企画制作を担当。その後、社内横断組織Future Creative Centerに所属し、ブランディングデザインに携わる。2023年に独立し、アレンス株式会社を設立。現在は、ブランディングデザインを専門とし、コンセプト開発・商品開発からコミュニケーション設計までを、アートディレクションを軸に、トータルで手掛けている。受賞歴として、NY ADC賞、ADFEST、ACC賞などがある。 

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