消費者の関心は企業の想いへの共感に変わった 所有の喜びだけではもうモノは売れない

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私自身もミレニアル世代に含まれますが、ここ数年で、値段が安くて便利なものではなく「トップにビジョンがある」「サステナビリティに配慮している」あるいは「造形として美しい」など、本当に意味があると思えるものを、できるだけ長く使いたいという発想に変わってきました。特に、少し奮発した買い物をする際は、「これでいい」と妥協せず、一生付き合えるかをよく考え、調べて買うようになりました。

これからの商品やサービスは、便利さや値段を追求するだけではなく、意味が求められているのです。

このように、私が広告会社に入社した2009年から2023年までのわずか15年ほどの間に、これまでの常識が覆されるような変化が次々と起こっています。

これからのブランドに必要なこと

広告業界を取り巻く環境が変化したことに伴い、アートディレクターとして、企業から求められることも変化しています。

私自身のキャリアに伴う変化もあるので、業界全体の傾向として一概には語れないものの、世の中の潮流は明らかに次に記す方向へ向かっていると感じています。

過去と現在を比較し、これからのブランドに必要なことを整理してみると、以下の4点にまとめることができます。

➀インパクトからストーリーへ

2009年時点での、広告会社の仕事では、短期的なインパクトを求められることが主流でした。当時の広告の仕事は、クライアントのオリエンから始まることが多く、オリエン資料の中で「広告キャンペーンを実施し、来年の売上を何%上げたい」というように、いつまでに何を達成したいのかが、明確に提示されていました。

しかし、現在はこのように短期的な目標を提示するのではなく、長期的な目線でブランド価値をどう高めていくべきかという相談が増えています。

背景には3つ、理由があると捉えています。

その理由の1つは、ブランドとして一貫性の管理が必要になってきたことにあります。企業から発信するコンテンツの量が増えたため、一貫性を管理することが以前よりも難しくなりました。一時的なインパクトだけを求めると、長期的な目線で見た時にブランドイメージが崩れてしまう懸念があります。

2つ目は、ブランドの情報発信が、途切れることなく続く、長期的な活動に変わったことが要因として挙げられます。これまでは広告キャンペーンの時期を半年に1度、四半期ごとに1度、などに設定し、時期を区切って情報発信を行っていました。しかし、伝える手段が多様化したため、情報発信は一時期に限られた活動ではなく、毎日取り組むものに変わったのです。

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