「肥満症薬バブル」でGAFAMを猛追する2つの銘柄 開発をリードする医薬品企業の評価が急上昇

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目下の課題は生産能力の増強だ。ノボは昨年11月、9000億円超もの巨額を投じて新たな工場を建設することを発表。増強は2029年にかけて段階的に行われ、GLP-1薬などの将来需要に応える姿勢だ。

一方のイーライリリーはアメリカでの生産能力拡大に投資をしているほか、ドイツにも約3700億円を投じて新たな製造拠点を建設する計画を発表している。工場が稼働する2027年以降はこうした生産能力拡大が寄与し、売り上げをさらに伸ばすとしている。

肥満症治療以外での開発も進む

GLP-1薬の開発で世界をリードする両社は、そのポテンシャルを糖尿病や肥満症以外の治療にも広げようとしている。

イーライリリーは非アルコール性脂肪性肝炎などに適応を拡大する試験を行っており、ノボもGLP-1薬で腎臓病や認知症に対する試験を進めている。株価急騰の背景には、こうした肥満症以外の新薬への期待も含まれているのだろう。

なお、世界でGLP-1薬の品不足が起きている理由として、2型糖尿病や肥満症患者ではない人たちが適応外使用している問題も指摘される。イーライリリーは2024年1月、マンジャロやゼプバウンドについて「美容目的」で使用することを控えるよう呼びかける文書を発表した。

肥満症は、肥満度を表す体格指数であるBMI(ボディマス指数)が一定以上の人で、さらに高血圧や脂肪肝、月経異常など健康障害が1つ以上あるか、内臓脂肪の蓄積により腹囲が一定基準以上の場合を指す。そのため単なる肥満の人やダイエット目的での利用は本来想定していない。こうした人たちが両社の足元の収益拡大に貢献している実態には、注意が必要だ。

アメリカのモルガン・スタンレー・リサーチは、肥満症薬の世界市場が2030年までに11兆円を超す規模に達すると見込んでいる。投資家の間でも過熱する肥満薬バブルは、まだ当面続きそうだ。

兵頭 輝夏 東洋経済 記者

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ひょうどう きか / Kika Hyodo

愛媛県出身。東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年東洋経済新報社入社、飲料・食品業界を取材し「ストロング系チューハイの是非」「ビジネスと人権」などの特集を担当。現在は製薬、医療業界を取材中。

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