「肥満症薬バブル」でGAFAMを猛追する2つの銘柄 開発をリードする医薬品企業の評価が急上昇
肥満症薬ブームの火付け役ともいえるノボ。ところが、イーライリリーの株価はそれを上回る勢いで上昇し、2023年初と比べて2倍を超えている。こちらも同じく、GLP-1薬である2型糖尿病向けの「マンジャロ」と、肥満症向け「ゼプバウンド」の成長への期待が大きい。
マンジャロは、2022年6月にアメリカで発売されたばかりの新薬だ。その売り上げは、同年の4.8億ドルから、2023年には51.6億ドルにまで急成長。デビューからわずか1年で、同社でもっとも売れている製品である「トルリシティ」に次ぐ大黒柱となった。
糖尿病薬自体は以前から存在したが、なぜここまで注目を集めているのか。
糖尿病は、血糖値の上昇を抑制するインスリンの働きが低下し、血糖値のコントロールが難しくなる病気だ。血糖値が高い状態が続くと、目の病気や脳卒中などにつながる可能性が高くなる。薬によって血糖値を下げることで、こうした合併症のリスクを下げられる。
GLP-1は食後に腸内から放出されるホルモンのことで、インスリンの分泌を増加させる働きを持つ。GLP-1薬は、このホルモンと同様の働きをする。
注射剤の場合、既存薬と比べて血糖値の低下をより長く持続させる効果があり、投与する回数を減らすことができる。それだけでなく、2017年にアメリカで発売されたオゼンピックが、2020年に心筋梗塞や脳卒中などの発症リスク低下の適応を得たことも大きい。多くの糖尿病患者が不安を持つ血管系リスクを抑えられることから、GLP-1薬への切り替えが急速に進んだ。
発売前から糖尿病患者以外の関心を呼ぶ
実はイーライリリーのマンジャロは、2022年にアメリカで発売される前から、糖尿病患者以外の肥満に悩む人たちの間でも大きな注目を集めていた。欧米人を対象にした臨床試験で、オゼンピックよりも高い体重減少効果を示したからだ。
イーライリリーは2023年末、マンジャロと同一成分で、肥満症患者向けに開発したゼプバウンドをアメリカで発売。欧米での臨床試験では、最大容量の15mgを1年間投与し続けた患者には、25%以上の体重減少の効果が示された。
これまで肥満症の治療は主に、即効性が乏しい食事・運動療法か、大きな効果がある一方で身体的・精神的負担も大きい胃の手術に限られてきた。第3の選択肢に対する需要は大きく、イーライリリーはマンジャロとゼプバウンドが2024年以降の成長を牽引すると予想している。
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