日本企業が中国で直面する「目詰まり」の正体

その在庫管理は適切ですか

そのためのアプローチとして、今回、沢木たちが進めようとしているように、大手欧米企業の間では、近年、中国をはじめとする新興国における貧弱かつ不確実性の高い経営インフラを、DMS導入を梃子にスピーディに構築・高度化することが主流となっている。

ちなみにアクセンチュアでは“NewsPage”と呼ばれるDMSパッケージを提供しており、数々のグローバル企業で採用されている。たとえば、このNewsPageでは、多くの消費財メーカーへの導入実績を踏まえ、すでに定型レポートの在り方が定義されており、導入初日から生産・営業・マーケティング各部署の意思決定に役立つレポートを出力可能である。

ただし、DMS導入を成功に導くためには、単にシステムを導入するだけではなく、代理商の絞り込みや契約スキームなど、既存の関係を見直すことがポイントとなる。具体的には、以下の3点に集約される。

①代理商の絞り込み
②アメとムチの契約スキーム
③チェンジマネジメントチームの導入

代理商の絞り込みが重要

① 代理商の絞り込み

まずは、代理商へのシステム投資も無限にできるわけではないので、DMS導入前に、下記4つの基準で今後も付き合うべき代理商を絞り込むことが必要だ。

・財務の安定性:キャッシュフロー、登記資本金など
・戦略の整合性:FMGC企業との取引の経験など
・ロジスティクス:車両数、倉庫のキャパシティなど
・Man power:営業や店頭プロモーションの人数など

 

② アメとムチの契約スキーム

業務改善と絡めた機能リベートを導入し、アメとムチの契約スキームに変えていくことも重要なポイントだ。そうすることで、代理商との間に馴れ合いではない緊張感を生むことができる。棚卸もせずに自らの在庫数も正確に把握できない卸へのリベート額は大幅に下がるため、自主的に改善せざるを得なくなる。

③チェンジマネジメントチームの導入

営業、財務、物流など各領域の専門家が、1週間程度、代理商に常駐して、システム導入~定着までを徹底して支援することだ。代理商任せではなく、BPRの格好の機会ととらえ、在庫管理の意識から業務、管理体制までを変えていくことが、DMSへの投資を無駄にしないためにも重要なのだ。

中国のみならず、他国にも必要なインフラ構築

最後に、実はこのDMS、今回のケースのように中国だけで使うのはもったいない。インドネシア、タイ、ベトナムなどアジア各国も多かれ少なかれ卸のコントロールに課題を抱えていることが多い。“アジア標準システム”として国を跨いで導入することで、国単位で個別にシステムを開発したり、吸い上げたデータの活用方法に頭を悩ませたりすることなく、スピーディーにSCM(サプライ・チェーン・マネジメント)のインフラを構築することができる。

この結果、各国経営者は、各国の経営環境を踏まえた販売・生産戦略にリソースを集中することが可能になるのだ。つまり新興国でのビジネスを成功に導くためのカギとなるソリューションのひとつ、といえるだろう。

(第4話へ続く)  

(使用イラスト:apichart / Imasia)

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