日本企業が中国で直面する「目詰まり」の正体 その在庫管理は適切ですか

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「私が思うのは、だからこそ代理商に対するメリットをいかに提示できるか、がポイントです。これまで御社の代理店政策は、“みんなにいい顔をする”というものでした。ホワイトスペースを埋める時代にはそれがよかったと思います。ただ、これからは、やる気のある代理商だけを選別して、共に成長していくというフェーズに入ってくると思います。いま一律に設定しているリベート基準も、メリハリをつけていくことも必要でしょう。今回のシステム導入を、そうした代理商政策自体の見直しを図っていく契機にしてはいかがでしょう」

「なるほど、経営力を高めたいと考えている代理商に対し、システム投資やその定着支援をして、チームを作っていくわけですね」

沢木はわが意を得たり、という風にお茶を飲み干した。

ニューシステムの導入

次の日以降、沢木は主要な代理商を訪問して在庫管理の実態を把握しつつ、オーナーと今後の経営方針についてひざ詰めで話した。改善意欲がある代理商に対しては、DMS(ディストリビューター管理システム)という流通管理システムを導入し、協働で業務改善を図っていくことを提案した。

そのうえでやる気のないディストリビューターとの契約を解除することで、代理商の数は120から65に半減した。もちろん、一時的な売り上げ減は覚悟の上である。信頼関係を築けるディストリビューターを選別して投資を集中することが、中長期的には理にかなうとの沢木の判断だった。

また、業務レベルによらず一律に支払っていたリベートは減らしたうえで、代理商としてやるべきことをやると(システムを活用しタイムリーにデータを送信する・受注をデータ化するなど)リベートを払うという“機能リベート”を導入し、代理商側のやる気を引き出すように契約を変えた。

2カ月後、沢木はデスクで売り上げ・在庫レポートに目を通していた。3つの代理商にDMSを先行導入し、在庫・前売りデータを用いて、生産・営業・マーケティング各部署の意思決定に役立つレポートを毎週出力している。レポート上には、どの商品がどの代理商にいくつあるか、受注や出荷データに基づく1週間後までの在庫予測などが“見える化”されていた。

どの商品が過剰・欠品気味か、一目で把握できる。しかも、DMS導入を通じて、棚卸や在庫管理のマニュアルを作成し、代理商側に徹底したので、数字の正確性も高まりつつある。

(これなら、どこに“血栓”ができつつあるか、一目瞭然だ。健康状態を保つための最低限のツールだな、これは)

のどの渇きを覚えて自販機で缶ジュースを買おうとした沢木は、思わず天然水のボタンを押した。(続く)

データをどう加工するかが大事

最後の沢木の独り言ではないが、中国で戦っていく上で、代理商の在庫管理レベルの底上げは最低限の経営インフラである。しかし、ただ単に在庫データを可視化するだけでは何もメリットは生まれない。そのデータをどのように加工し、実際の業務指示やアクションに落として成果を挙げていくか、ということを定義した上で、自社のビジネス特性を踏まえた“帳票”に落とし込むことが重要だ。

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