気鋭アパレル「初任給40万円・残業80時間」の真意 アパレル企業の平均年収ランキングも一挙公開

拡大
縮小

――縮小する国内アパレルで、どう成長路線を描きますか?

アパレル業界は、この20年で市場規模が縮小した。一方で在庫量は3倍、店舗数やブランド数も3倍になったとされる。必要以上に店やブランドが増え、売れ残った在庫をセールにしているという現状だ。その中で、われわれは出店を東名阪(東京・名古屋・大阪)の主要都市に絞っている。

従来のアパレルは、各社のメインブランドを都心部の路面店や「ルミネ」などのファッションビルに出店し、(普及価格帯の)セカンドブランドを「ららぽーと」などの郊外ショッピングモールや、全国の都市に出していくのがセオリーだった。対して当社は(消費が伸びている)東名阪に絞って様々な業態を打ち出していく。

地方郊外への出店モデルだったら、今回のような賃上げは現実的ではなかったかもしれない。低価格業態をやめて中価格帯以上の業態に集中することで、目指していたビジネスモデルが整ってきた。単価が少し張っても、商品やサービスの価値が伝わる顧客にアプローチしていきたい。

ECやAIから顧客感動は生まれない

――EC(ネット通販)も主流になっていますが、出店は続けますか?

時代を問わず、僕が会社をやるうえでは実店舗は大事にしたい。アパレルは流行や景気によるアップダウンがある業界だが、だからこそ定性的な状態を見られる店舗は必須だ。ECで売れる商品は結局安いものに絞られていく。実店舗を持っている強みは、もちろん定量情報も見るが、定性的な情報・どんな人が買っているか、がわかることにある。

当社が目指す「顧客感動」の体験を生み出せるのも実店舗ならではだ。単純な商品比較ならECやAI(人工知能)でもできるかもしれない。一方で販売員はお客様が想定していなかったような商品を提案することもできる。そうした攻めた提案には当然リスクを伴うが、積極的なサービスをしていかなければ人の存在意義は残っていかないし、顧客感動も生まれない。

店舗は今後、省人化を徹底的に追求した店舗と、販売員による付加価値のあるサービスを追求していく店舗の形に二極化していくのではないか。僕らは後者を目指していくつもりだ。

山﨑 理子 東洋経済 記者

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やまざき りこ / Riko Yamazaki

埼玉県出身。大学では中国語を専攻、在学中に国立台湾師範大学に留学。2021年東洋経済新報社に入社し、現在小売り・アパレルを担当。趣味はテレビドラマのロケ地巡りなど。

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