「親ロ心理」はあっても欧州を向くブルガリアの本音 ソ連共産圏の優等生からイノベーションハブに
ブルガリアの技術人材は優秀だ。それは社会主義時代から知られていたし、今も当地日系企業は声をそろえる。
INSAIT(インサイト、Institute for Computer Science, Artificial Intelligence and Technology)という東欧初のAI研究機関が注目されている。この研究所はソフィア大学や政府、スイスの連携で設立され、グーグルやアマゾンからの出資を受けた。
AIやロボット開発で日本企業と協力
INSAITと日本の大企業がロボット開発を進め、理化学研究所がMOU(了解覚書)を結んだ。2023年5月には日本の西村康念経産相(当時) と日本企業のグループが来訪し 、「ブルガリアは新しい風が吹いている。安い労賃の国という古い印象を改めた。技術が優秀で有望だ」と述べた。実際に、ブルガリアはバルカン半島におけるイノベーションハブへの道を歩んでいる。
「ブルガリアは経済も外交も活発な国。ODAが終わったといって大企業が撤退したのは日本だけ」というのが、現地での私の実感だ。
外国からの投資は10年間で2.6倍に増加。EU基金も活用し、近隣国との東西南北の回廊(鉄道、道路)、クリーンエネルギー、空港、港湾等の大きなEU案件が多い。ドイツ、オーストリア、イタリア、スイス、オランダ、ギリシャ企業の存在感は大きく、投資額は日本の25倍から70倍に達する。
ある大臣いわく、「インフラ案件をスペインと中国が競ったり、ドイツとトルコが組んだり、皆よく手を挙げてくれる。韓国は原発受注が確実。日本企業の名を長年聞かず、残念です」。
駐ブルガリア・アメリカ大使は、「発電、機械、医薬品、ホテル等各業界に、非常に多数のアメリカ企業がいるのがわれわれの強み」と胸を張る。中国のブルガリア進出は近隣国ほど熱心でないが、教育、メディアへの浸透を進めている。
ODA終了 を受け、スイスはEU新規加盟国の困難を支援する新たなスキームを作った。インフラや教育等、従来のODAと同様の支援を続けている。「EUメンバーでないスイスの貢献がブルガリア国民の目に見える、最大のツールだ」と大使が話す。みな工夫しているのだ。
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