「親ロ心理」はあっても欧州を向くブルガリアの本音 ソ連共産圏の優等生からイノベーションハブに

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ブルガリアはウクライナからの戦火から遠く離れている。ウクライナからブルガリアに入国した避難民は累計225万人。現在も5万人がブルガリア国内に残る。夏には黒海沿岸で就職の機会が増えるので8万人になる。

ブルガリア政府のウクライナ支持・支援は非常に明確だ。弾薬・軽火器を含め、ウクライナの戦闘継続を実質的に支援している。国防相はこの点を強調しつつ、「ウクライナがもちこたえて反転に転じるまで、今後1年の各国支援が肝要だ」と指摘する。

「ウクライナ戦争には中立」が約7割

一方、世論調査では「ブルガリアはこの戦争に中立たるべき」が68%、ウクライナ支持が16%、ロシア支持が9%だ(2022年10月)。また、「ウクライナへの武器供与に賛成」が17%、「すべきでない」が65%だ(2023年8月)。なお派兵はしないと政府は明言している。

ロシアによるウクライナ侵略は、程度の差はあれ中東欧各国に「EUか、親ロ並存か」の問いを改めて突き付けた。親ロ土壌が強いブルガリアが注目されるのは当然であり、日本やアメリカから見て、ブルガリアの外交戦略上の重要性は増している。アメリカ人の大使館員数は91と、日本の10倍だ。

最近、元大統領が公開セミナーでEUの歴史的意義を強調したうえで、「20年前なら、プーチンはルーマニアやブルガリアを自陣営に組み込もうとしたろう」と述べた。

ロシアや中国について「自分たちも同じ社会主義だったからよくわかる」と識者が批判的に語るのも、興味深い。死傷者が出てもロシア市民の厭戦感情を抑え込み、戦争動員を続けるロシアの手法がよくわかるという。

また、豊かになったのはすべて共産党のおかげと教育する中国のやり方もそう。かつて自分たちが経験した社会主義の特質だという。

ガブリエル副首相は「ブルガリアはバルカン半島の安定化要因になる」「アジア各国でビジビリティーが低いので向上させたい」と力説している。

かつて存在したブルガリア王国の最後の国王であったシメオン2世(1937~)にお会いした 。第2次世界大戦中の1943年、6歳で国王に即位。ソ連が入り1946年に王制廃止、9歳で亡命(親族の処刑もあった)後、半世紀以上経って帰国し、2001年から首相を務めた波乱万丈の人生だ。

「私を含めブルガリア人はみな日本を尊敬しています。元気な日本の姿をぜひ再びブルガリアで見せてください」

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