不正続発の大手損保は"ウミ"を出し切ったのか ビッグモーター、カルテル問題で処分も残る闇

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三井住友海上火災保険の自動車保険においても、契約者を置き去りにし、ディーラーを優遇する様子が垣間見える。

状況を理解するうえで、まず知っておきたいのが自動車保険における「長期分割」という特約の存在だ。2年や3年といった複数年で自動車保険を契約するときに付帯する特約で、単年契約より保険料を割り引くのが特徴だ。顧客にとっては、自動車保険で毎年の契約更改手続きを省けるだけでなく、事故を起こして保険金を受け取っても、契約期間中であれば複数年にわたって保険料が上がらないというメリットがある。

一方、損保にとっては、契約期間中に保険料を上げることができないため、収益性が低くなる傾向がある。ゆえに大手損保が長期分割を大々的に宣伝することはなく、できることなら廃止したいというのが本音だろう。

それでも長期分割を温存させているのは、ディーラーの意向が大きいからだ。保険代理店でもあるディーラーにとって、長期分割によって毎年の契約更改手続きなどの手間が省けるメリットは大きく、それゆえ顧客に推奨しているケースが多い。

一部の大手損保では、自動車保険全体に占める長期分割の比率が高まり、収益性が低下することを防ぐために「ディーラー以外の販路では、長期分割の比率を制限するなどしている」(大手損保幹部)という。

三井住友海上のニューロングで混乱

そうした環境で、三井住友海上が2010年に発売したのが「ニューロング」という商品だ。長期分割と同様、2年や3年の複数年契約をすることで保険料が割引になるが、事故で保険金を受け取ると契約期間中でも保険料が上がる仕組みになっている。

ここで問題なのは、三井住友海上が商品を一本化せず、ニューロングを基本的にディーラー以外の販路で提供し、長期分割もディーラーに対して従来通り提供し続けたこと。その結果として起こっているのが、契約者の混乱だ。

そもそも三井住友海上にはニューロングと長期分割という2つの複数年契約の保険があることを、契約者も、ディーラーなどの代理店も、ほとんど理解していない。2つを比べて検討できるようにしていないのだから当然だろう。

その結果、ディーラー以外でニューロングを契約した顧客が、車を購入したディーラーに修理を依頼すると、今後の保険料について説明が食い違ってしまうのだ。契約者もディーラーも、またディーラー以外の代理店も、関係者すべてが混乱するという事態が「現場では起きている」(三井住友海上の関係者)という。

商品戦略をディーラーにおもねるあまり、一般の契約者にシワ寄せが生じ、無用な混乱を招いている実態を直視すべきだろう。

ビッグモーターとカルテルという2つの不正問題で業界としての信用を失った今、大手損保各社はそうした不都合な事実から目をそらし、改革の手綱を緩めているような暇はないはずだ。

中村 正毅 東洋経済 記者

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なかむら まさき / Masaki Nakamura

これまで雑貨メーカー、ネット通販、ネット広告、自動車部品、地銀、第二地銀、協同組織金融機関、メガバンク、政府系金融機関、財務省、総務省、民生電機、生命保険、損害保険などを取材してきた。趣味はマラソンと読書。

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