評価を高める奇妙な「レッドスニーカー効果」とは 会議に真っ赤なスニーカーで来る人がいる理由

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こうした研究はマーケティングにどんな関連性があるだろうか。スニーカーの話は面白いが、論文で説明されている状況――会議や学会におけるドレスコードやひげ剃りなど――は広告の話とは関係がない。宣伝を作るにあたって、この発見を参考にできる部分はあるだろうか。

そうした疑問を出発点として、私は2020年にダンカン・ウィレットおよびサムラン・カウルとともに、より商業性の高いシチュエーションでのレッドスニーカー効果を検証している。

被験者には、ブランドネームのわからないクラフトビールの瓶を見せた。いずれも目を引くようなボトルデザインなのだが、4本のうち3本は似通ったスタイルのデザインであるのに対し、残り1本だけ明らかに雰囲気の違うデザインになっている。被験者にはそれぞれのビールの質を評価するよう求めた。

次に、別の被験者グループにも、同じく4本のビールを見せた。4本のうち2本は最初の実験で独特だった1本と、ほかと似通っていた1本だ。さらに新たな2本として、独特だった1本と似た雰囲気でデザインされたビールを並べた。

同じボトルデザインが、ほかのデザインとそろっている場合と、逆らっている場合で、評価に違いが出るかどうか調べるという意図だ。

結果はレッドスニーカー効果のとおりで、ボトルデザインが4本中1本だけ特別だったときのほうが、高い評価がつくことがわかった。ジーノの研究と比べれば差は小さいが(評価は5%高くなっただけなので)、この逸脱は広く社会的な慣例を破ったわけではなく、単にボトルデザインが違うというささやかな逸脱だ。それだけのことで差が出たのだから、もっと大きく慣例を破る工夫をすれば、より大きな効果が生じると考えてよいだろう。

ポジティブな影響を及ぼすには条件がある

それなら今すぐ慣例を破る広告を作ろう、と飛びつく前に、このバイアスの微妙な性質について考えておく必要がある。レッドスニーカー効果でポジティブな影響をおよぼせるのは、いくつかの条件を満たした場合だけなのだ。

ブランドでレッドスニーカー効果を発揮したいなら、第一の条件として、そのブランドがすでにステイタスを獲得済みでなければならない。

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