「管理職目指す女性が少ない」日本が直面する現実 DeNA南場会長とハイセンスジャパン李社長対談

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――李さんは、家族の後押しを得て海外で社長をされているわけですが、日本で働いているときにご主人が亡くなりました。

:夫は仕事があったので中国で生活していました。そして2019年、46歳のときに心筋梗塞で突然死しました。

その10年前から糖尿病で闘病していたけど、普通に仕事もしていたし、まさかこんなに急に亡くなるとは思わなかった。まったく心の準備ができていませんでした。

夫は何でも話せる唯一無二のパートナーでした。離れて暮らしていたけど、しょっちゅう行き来していたし、会えないときはテレビ電話で毎晩仕事や家族のことを話して、助言をくれたり寄り添ってくれました。

夫が亡くなってからは、精神的にもつらく崩壊寸前でした。10歳の娘は私のこのつらさを全部はわかってくれない。誰もこの苦しさをわかってくれないと追い詰められました。

それでも日々仕事はある。こんな状態では社長の重責を担えないと思い、日本の社長を辞任したいと本社に申し出ました。

人生は山登りのようなものだ

――それで辞められた?

:いえ、今のハイセンスグループの会長が「仕事をプレッシャーに感じることはない。成果を上げようと頑張らなくていいから」と引き留めてくれて、その後も気にかけてくれました。

私も日本が大好きで、日本を離れたいとは思っていなかったので、少し気が楽になって、そこから運動をしたり、娘が大きくなって私の気持ちを理解してくれるようになり、最近ようやく生きていることの幸せを感じられるようになりました。

仕事の能力に男女差や国籍の差はないですが、管理職や企業のトップを目指す道のりで家庭や個人の事情と板挟みになることはあります。

人生って山登りのようなもので、途中でもう登れないとくじけそうになっても、家族や同僚、日本の取引先など周囲の人々に支えてもらって、私は降りなかったから新しい景色を見て「登り続けてよかった」と思う日が来た。夫の話もこうしてできるようになりました。

人の潜在能力は無限だと思っています。自分に制限をかけなかったら、新しい景色を見られると信じています。

(後編に続く)

後編は3月15日に配信予定です
浦上 早苗 経済ジャーナリスト

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うらがみ さなえ / Sanae Uragami

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育など。中国メディアとの関わりが多いので、複数媒体で経済ニュースを翻訳、執筆。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。新書に『新型コロナVS中国14億人』(小学館新書)。
Twitter: @sanadi37

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