
①「フジテレビ問題」の背景に横たわる根本問題。放送業界データからひも解く「男性優位の同質性」
②女性が意思決定層に上がれない4つの根本要因。「同質性の弊害」を放置した先に待っているもの
③放送業界における「女性活躍の現在地」。時代遅れのジェンダー観が阻む制作現場の多様性
本特集の1本目の記事では、フジテレビ問題の第三者員会報告書で指摘された「男性優位の同質性」がなぜこれまで解消されてこなかったのか、女性社員の割合や女性役員数の変遷など、放送業界のデータに基づいてひも解きました。
今回は、「同質性」の解消には組織の意思決定層に女性が増えることが必要で、そのためにはどうすればいいのか、先人の女性活躍研究の視点から見ていきたいと思います。
女性の管理職登用に試行錯誤
一口に「女性活躍」と言っても、思い浮かべるイメージは人それぞれです。
資生堂で初の人事課長となり、以降もダイバーシティ経営の観点で発信を続ける山極清子氏は、「女性に権限、地位、重要な仕事を与えることで組織のパワーバランスを変え、組織を活性化しようとする経営戦略」が、企業における女性活躍のカギだとしています。
そこで本稿では「女性がどれだけ意思決定者(管理職やリーダー)になっているか」を、女性活躍の指標とします。
その指標に沿って、まずは国内の現状を確認してみましょう。
放送局を含め、国内企業は女性の管理職登用には試行錯誤しています。厚生労働省の「令和5年度雇用均等基本調査」によれば、女性管理職は2009年以降、係長、課長レベルでは増加しています。しかし、部長相当職以上になると伸びは鈍いか、あるいは減少しています。

政府は2003年6月に「2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%にする」としましたが、達成には程遠く目標は2030年まで延期されています。
そもそもなぜ目標が30%なのか。その根拠となるのは、アメリカの社会学者ロザべス・モス・カンター氏が提唱した「黄金の3割」の理論です。組織において、少数派でも35%に達すれば、意思決定に影響を及ぼせるようになる。会議などで少数派が発言しても、「異見」として扱われるだけですが、少数派でも3割を超えれば、無視できない「意見」として受け止められるようになる、というものです。
つまり、女性の抱える課題や不利益が、組織全体で「解決すべきもの」になるには、その組織体で3割の人数が最低限必要になるということです。
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