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女性が意思決定層に上がれない4つの根本要因。「同質性の弊害」を放置した先に待っているもの

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フジテレビ第三者委員会の指摘をきっかけに放送業界は変われるか(写真:クリエイター/PIXTA)

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わたしは毎日放送東京報道部で記者として働く傍ら、2022年4月、法政大学大学院に進学し、「放送局の番組制作現場における女性活躍の現在地と今後の課題」とする修士論文を執筆しました。キャリア形成の観点から放送局のジェンダー構造を研究したもので、これをもって2024年3月にキャリアデザイン学修士の学位を授与されました。本稿はその論文を再構成したものです。
なお、この研究は個人として行い、所属会社とは関連しないこと、調査は複数の放送局にまたがっており、個社の事例ではないことをあらかじめお断りしておきます。
【特集記事一覧】
「フジテレビ問題」の背景に横たわる根本問題。放送業界データからひも解く「男性優位の同質性」
②女性が意思決定層に上がれない4つの根本要因。「同質性の弊害」を放置した先に待っているもの
放送業界における「女性活躍の現在地」。時代遅れのジェンダー観が阻む制作現場の多様性

本特集の1本目の記事では、フジテレビ問題の第三者員会報告書で指摘された「男性優位の同質性」がなぜこれまで解消されてこなかったのか、女性社員の割合や女性役員数の変遷など、放送業界のデータに基づいてひも解きました。

今回は、「同質性」の解消には組織の意思決定層に女性が増えることが必要で、そのためにはどうすればいいのか、先人の女性活躍研究の視点から見ていきたいと思います。

女性の管理職登用に試行錯誤

一口に「女性活躍」と言っても、思い浮かべるイメージは人それぞれです。

資生堂で初の人事課長となり、以降もダイバーシティ経営の観点で発信を続ける山極清子氏は、「女性に権限、地位、重要な仕事を与えることで組織のパワーバランスを変え、組織を活性化しようとする経営戦略」が、企業における女性活躍のカギだとしています。

そこで本稿では「女性がどれだけ意思決定者(管理職やリーダー)になっているか」を、女性活躍の指標とします。

その指標に沿って、まずは国内の現状を確認してみましょう。

放送局を含め、国内企業は女性の管理職登用には試行錯誤しています。厚生労働省の「令和5年度雇用均等基本調査」によれば、女性管理職は2009年以降、係長、課長レベルでは増加しています。しかし、部長相当職以上になると伸びは鈍いか、あるいは減少しています。

政府は2003年6月に「2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%にする」としましたが、達成には程遠く目標は2030年まで延期されています。

そもそもなぜ目標が30%なのか。その根拠となるのは、アメリカの社会学者ロザべス・モス・カンター氏が提唱した「黄金の3割」の理論です。組織において、少数派でも35%に達すれば、意思決定に影響を及ぼせるようになる。会議などで少数派が発言しても、「異見」として扱われるだけですが、少数派でも3割を超えれば、無視できない「意見」として受け止められるようになる、というものです。

つまり、女性の抱える課題や不利益が、組織全体で「解決すべきもの」になるには、その組織体で3割の人数が最低限必要になるということです。

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