そうなると、結局、保険の場合は価格と性能だけが残ります。このことは保険がマーケティング論で言う差別化の難しいコモディティ商品(ありふれてしまい、どれも大差がなくなっている商品)であることを意味します。ですからこの考え方に立てば、保険は選びやすい、わかりやすい商品のはずです。保険の価格は「保険料」、保険の性能は「保障額」です。この2つを比べるだけでよいのです。
わかりにくさの元凶は「パッケージ」
「保険料」は一目瞭然です。ところが、現実には「保障額」が意外とわかりにくいのです。そして、そこに保険をわかりにくくしている仕掛けがあります。それが「パッケージ」です。パッケージ化(多機能化)はマーケティング理論の説く差別化戦略のひとつです。保険会社は理論の通り行動しています。一般的な保険商品には一つの保障だけでなく、その他の多くの保障が詰め込まれているからなのです。
たとえば、主だったものだけでも、死亡、医療、傷害の保障機能、それに加えて貯蓄機能が盛り込まれていたりします。標準的なものは、死亡保障に貯蓄が付き、さらに医療保障が組み込まれている保険です。詳しく見ると、死亡の中身も病気や災害に分かれ、医療も入院、通院、手術などがありますから、パッケージ保険はまるで保障のデパートのようです。
保険営業員は「すべてカバーされているので、これ一本で大丈夫です」と自信ありげに説明するかもしれません。でも消費者から見れば、使わないアプリケーションがやたらプレインストールされているパソコンのようなものです。余分なものまで買わされています。いろいろ詰め込まれているために、一つひとつの保障をきちんと理解するのは容易ではありません。
「保険はわかりにくい」と多くの人たちが感じている原因はここにあります。あれもこれも詰まっているパッケージでは中身が分からないのも無理ありません。保険営業員ですら、きちんと説明できない人が多いかもしれません。
しかし、これへの対応策は簡単です。パッケージを壊してしまえばよいからです。いったん分解して、不必要な保障を取り除き、必要な保障だけにスッキリさせてしまえばよいのです。すると保険の「費用」対「効果」が見えてきます。そして保険選びは簡単になります。
最初に取り除くのは貯蓄機能です。「保障」と「貯金」はまったく別のものです。ところが多くの保険は当たり前のように保障と貯金がセットされています。例えば、終身保険という保険はひとつの保険商品と思われますが、実は保険と貯金の二つがパッケージ化されているものです。パソコンとプリンターがセットで売られているようなものです。本来はそれぞれがバラバラで売られてしかるべきものです。パソコンだけを買いたい場合、プリンターは余分です。だからプリンター除きの価格を確認して、他のパソコンと比較すると思います。同じように、保険は保障が目的ですから、貯金部分は余分です。貯金部分を取り外すと、保険はすべて掛捨て保険になります。保障を目的とするならば、保険は掛捨てでよいのです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら