経験の浅い新人でも「武器」を持てる納得の方法 気の利いた言葉より強い説得力を持つものとは

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わたしは、新人時代に、「営業の効率を上げる」ことをテーマにしたプロジェクトに配属され、そこで、はじめて1対1でクライアントと話す機会を与えられました。そのきっかけになったのが、とある会社の営業社員の行動に関するデータ分析でした。

そもそも、営業社員はどういった顧客を訪れるべきだと思いますか?

もちろん売れている顧客、より正確に言うと、「予算をたくさんもっていて、実際に買おうと考えている顧客」ですね。では、そういう顧客のところに、自社の営業社員はちゃんと足を運んでいるのか?

当たり前と思われるかもしれませんが、本当にそうなのか、数字による確認が必要です。わたしは、その数字の分析を当時のマネジャーに指示されました。作業は地道なものでした。典型的な、新人の仕事です。

まず、営業の日報を取り寄せ、誰がどこに何回訪問したのかを集計しました。そして、実際の売上実績や、マーケティング会社が提供する市場規模のデータとそれらを突き合わせました。

その結果、その会社の営業社員は、自社製品をすでに使ってくれている顧客に足繁く通っていて、結果的に、予算があるものの攻めきれていない顧客には、たいして時間を割けていない傾向があることがわかりました。

部長が知りたかったのは、この事実です。実際に、自社の営業社員がどういう行動をしているのか、部長は感覚的には問題を認識しつつも、実際の数字としては、事実を把握できておらず、人を納得させる「証拠」がありませんでした。

ですから、わたしたちはコンサルタントとしてそれを調べあげました。事実は、予想された通り。営業社員は、予算のあるところにではなく、行きやすいところに行っていたのです。

感覚的に把握している問題を、実際に「数字」に落とし込み、「証拠」にすることで、人を納得させる。

事実には誰も文句を言えない

このデータを見た部長は、薄々感じていたことがデータで裏付けられ、納得した様子でした。もちろん、社内的にもこの事実はショックです。しかし、事実なのだから、誰も文句は言えません。しぶしぶかもしれませんが、納得するしかないのです。

その後、どうして改革が必要かを社内に語る際にも、このデータは重要な事実として引用されました(なお、このデータを使ってクライアントの部長に話をしたのは、一年目のわたしではなく、マネジャーです)。

その後、みんなこの数字に興味をもってくれました。わたしが分析したようなデータをすぐに取得できる簡単なシステムをつくれないか、という依頼もあり、実際につくりました。

そのシステムは、その後の本格的なマーケティング分析システムを構築するきっかけともなりました。その過程で、わたしは、マーケティングに関する数字の取得と分析について任されるようになり、はじめてクライアントの前で「数字については、彼が担当します」と上司に言ってもらえたのです。

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