異例の「計画棚上げ」アップルEV撤退が映す憂鬱 ドル箱iPhoneは伸び悩み、「次」も出てこない

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同社は近年、最重要製品のiPhoneが市場で飽和状態となり、消費者のスマホ買い替え頻度が低下する中、新たな成長手段を見つけるのに苦労している。

CEOのティム・クックは、アップルが自動車分野への参入に関心を持っていることを公然とほのめかしてきた。同社はまた、自動運転技術を搭載した車両を何年にもわたって何百台と公道でテストしてきた。

社内コードネームで「Titan(タイタン)」や「プロジェクト172」と呼ばれたアップルカーは、製品開発の過程で部門の一部が閉鎖されたり、計画の中止・再開を経験したり、何十人という従業員がレイオフされたりと、紆余曲折が続いていた。

アップルが研究に何十億ドルという資金を費やしたこの車は、自動運転機能を備えたテスラのEVのライバルになることを目指していた。

クックCEOの憂鬱

この製品は、「アップルはイノベーション力を失い、ザ・ネクスト・ビッグ・シング(次の大きなもの)を生み出せなくなった」という世評を覆すものになったであろうというという意味で、クックの経営遺産にとって重要な意味を持っていた。

クックのリーダーシップの下でアップルが発売したハードウェア新製品は少数にとどまる。スマートウォッチ市場をリードする存在となった「Apple Watch」、販売面では失敗となったスマートスピーカーの「HomePod」、メタの仮想現実ヘッドセットに対抗し3500ドルで2月に発売されたゴーグル「Vison Pro」などがそれにあたる。

アップルは新技術の開発に多額の投資を行っており、直近5年間では1130億ドルを研究開発に費やしている。

(執筆:Brian X. Chen記者)
(C)2024 The New York Times

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