ゴールデンカムイの「カムイ」はいったい何なのか 大ヒット漫画を通して、アイヌ文化を分析する
伝統的なアイヌの世界観では、世界のあらゆるものにはラマッ「魂、霊魂」があると考えられています。その中でも精神・意志を持って何らかの活動をしていると感じられるものを、特にカムイと呼びます。
カムイと呼ばれるものと呼ばれないものの境目は、人によっても地域によっても変わります。アシㇼパが「全ての者はカムイと呼ぶことができる」と言うのはこのことを言っているので、「意志を持って活動している」と感じられれば、普通はカムイと呼ばれないようなものでもカムイになり得ます。
「人間も含め」というのは、人間が死ぬとカムイになるという考え方もあるからです。またカムイという言葉は一種の尊称としても使われるので、生きている人でも敬意をこめてカムイと呼ぶことがあります。
でも、それはやはり日常で生活している一般の人々とは区別した言い方なので、本質的にはアイヌ「人間」とカムイは別の存在です。そして、人間の力が及ばないようなことができるものほど、格の高い、えらいカムイだと考えられてきました。
カムイの「活動している」という条件
カムイと考えられる条件である「活動している」というのは、現代の私たちが考えるよりずっと幅の広いとらえ方です。2巻12話でアシㇼパは「火や水や大地、樹木や動物や自然現象、服や食器などの道具にもすべてカムイがいて、神の国からアイヌの世界に役に立つため送られてきてると考えられ」と言っています。
火は熱や光を発し、人間にぬくもりを与え、暗い夜を明るくしてくれます。そしてそのままでは食べられない食材をおいしい料理に変えてくれます。それが火の活動であり、そのために人間は家を建てると、「カムイの世界」からわざわざ火のカムイを招いて、自分の家の囲炉裏(いろり)の中に来てもらうのです。
家や舟や臼や杵(きね)や鍋など、人の手で作って使っている道具類もみなカムイです。11巻109話では「刃物は手では切れない物を綺麗に切ったりしてくれるからカムイが宿ってる」と説明しています。人間が刃物を使って切るのではなく、刃物が人間にない能力を発揮して人間を手伝ってくれるからこそ、ものが切れるのだと考えるわけです。
このように人間のできないことをしてくれるものは、魂を持つすべてのものの中でも、特にカムイと考えられやすいものです。
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