ゴールデンカムイの「カムイ」はいったい何なのか 大ヒット漫画を通して、アイヌ文化を分析する

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カムイは本来「カムイの世界」で暮らしています。これは一か所というわけではなく、熊やキツネなどの山に住む動物であれば人間が足を踏み入れないような山奥にあり、海の動物であれば水平線の彼方、鳥や雷など空を飛ぶものであれば、天空にあると考えられています。さらに、カムイの魂は山奥や海の彼方にある世界からも移動して、最終的にはみんな天界に行くと考えられているという説もあります。

アシㇼパは2巻12話で「動物たちは神の国では人間の姿をしていて 私たちの世界へは動物の皮と肉を持って遊びに来ている」と説明しています。このカムイの世界での人間の姿というのは、魂の状態であることを意味しており、カムイの世界ではカムイは人間と同じようにご飯を食べたり、結婚したり、泣いたり笑ったりして暮らしていると考えられています。

動物や植物、火や水の姿で現れる

そして、そこからそれぞれの理由で人間の世界にやって来るのですが、魂のままでは人間の眼には見えず、人間と交流することができませんから、それぞれ衣装をまとってやって来ます。それが私たちの眼に映る動物や植物、あるいは火や水の姿というわけです。

ゴールデンカムイ
2巻12話(野田サトル/集英社)

カムイたちはそれぞれに目的があって人間の世界にやって来ます。そのことが、コミックスのカバー袖にいつも書いてある、カント オㇿワ ヤク サㇰ ノ アランケㇷ゚ シネㇷ゚ カ イサㇺ「天から役目なしに降ろされた物はひとつもない」という言葉に集約されています。このヤク「役目」には、実にいろいろなものが含まれます。

シマフクロウは人間の村を守るため、カッコウやツツドリはマスの豊漁・不漁を告げるために、わざわざ天界から人間の世界にやって来ます。樹木は大地に深く根を張って地面を支えていることから、シㇼコㇿカムイ「大地を守るカムイ」やシランパカムイ「大地を持つカムイ」とも呼ばれています。そのようにして大地を守ることがヤクのひとつというわけです。

22巻219話には、ミソサザイという小さな鳥が出てきますが、これは熊が近くにいると、チャㇰチャㇰと騒ぎ立てて、そのことを人間に伝えるのだと言われています。同じ小鳥でも、23巻228話にはシマエナガという鳥が登場します。アイヌ語ではウパㇱチㇼ「雪の鳥」と呼ばれ、これが群れをなしてやって来ると雪が降ると言われているそうです。

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