社会資本は、人口減と将来世代負担を考えよ 日本創成会議の提案に欠けている視点

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少子高齢化がもたらす問題は、介護や医療の問題だけではない。これまで増加を続けてきた人口が長期にわたって減少を続けるという、これまで経験したことのない状況に対応しなければならない。日本の人口は2008年頃をピークに減少傾向に転じた。国立社会保障・人口問題研究所の予測では、日本に住む人の数は2048年には1億人を割り込み、2060年にはさらに8674万人へと減少していくと見られている。

政府は、「経済財政運営と改革の基本方針2014」(いわゆる骨太の方針)の中で、「人口急減・超高齢化に対する危機意識を国民全体で共有し、50 年後に1億人程度の安定した人口構造を保持することを目指す」との方針を打ち出している。人口が増加を続けることも、逆に減少を続けることも好ましいことではなく、ほぼ一定の水準で安定するのが望ましいことは本欄の「なぜ人口を安定させることが必要なのか~増え続けることも減り続けることも問題」(2014年7月)で述べた通りだ。

人口の減少を前提に「減築」と「リフォーム」を

しかし、人口減少を止めるためにこれまで以上に力を注ぐとはいっても、日本の人口が安定するのは相当先の話になる。国立社会保障・人口問題研究所の予測では、出生率が高いケースでも2054年には日本の人口は1億人を割ってしまうと見られている。

人口は、相当な政策努力によって1億人を維持できたとしても、最も多かった2008年12月の1億2809万9千人からは、4分の3程度に減少してしまう。したがって、少子化対策に力を入れれば人口減少への対応が不要になるという話ではない。

これまで日本では、住宅や個人の生活を支える道路や上下水道、電気やガスなどの生活インフラや学校から医療施設に至るまで、すべての社会資本は人口増加に対応して整備が進められてきた。しかし、今後は人口の減少が見込まれるのだから、人口規模の縮小に合わせた社会資本の整備が課題になる。

人口が減少に転じているにも関わらず量の拡充が続いてきたことでおきた現象の典型的な例は住宅だろう。総務省統計局「住宅・土地統計調査」によれば、戦後間もない1958年には、住宅数は1793万戸で総世帯数1865世帯を下回っており、1世帯当たりの住宅は0.96戸と住宅ストックが明らかに不足していた。しかし、1978年には1世帯当たりの住宅は1.01戸と住宅数が世帯数を上回るようになり、2013年では住宅数は6063万戸と世帯数の5246万世帯を大きく上回って、1世帯当たりの住宅は1.16戸に達している。

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