この連載では、地方創生を考えるうえで欠かせない、いくつかの論点をとりあげています。前回のコラム「偽物の官製成功事例を見抜く5つのポイント」では、行政側がつくる「ウソの成功事例」が、本当の地方創生にとっていかに害悪になるかを検証しました。
今回は、街を変えようとする際、その成否のカギを握る「集団による意思決定」の問題について、考えたいと思います。
地域活性化で「反対されないこと」は重要なのか
地域活性化分野において、多くの関係者が課題だと思い込んでいるのが「地域で合意形成をしなくてはならないが、うまくいかない」というものです。
実は、私のもとにも「関係者全員の合意がとれない」「どうしたら反対されないのか」ということに関する相談が来るのですが、これが結構な頻度にのぼります。本当に必要なのは、「地域がどうしたら活性化するか」という事業を成功させるための努力のはずです。しかし、具体的な活性化手法よりも、合意形成に囚われてしまっている人々があまりに多いのです。
そもそも、物事の仕組みを変える際、新たな取り組みについて、皆が事前に合意できるなんてこと自体が実は幻想であると思うのですが、どうしても「皆に合意してもらわなくてはならない」と思い込んでしまい、前に進めないのです。
これには、「日本人は皆で合意しなくてはならない」という、強迫観念にも似たものがあるように感じます。何でも皆の意見を聞き、それを反映することこそが「良いこと」だと思われているのです。
では、皆が合意をすれば、プロジェクトは全て成功するのでしょうか。残念ながら「そんなことはない」というのは、読者の皆さんもお気づきの通りです。
そもそも、衰退している地域に「新たな活力」を生み出すには、「新陳代謝」が必要です。古いものが新たなものに置き換わるプロセスでは、新しい取り組みは、一部の人には短期的に不利益に見えることも多々あるのです。
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