なぜ地方創生はみんなで決めるとダメなのか 何かを変えねばならない時、合意形成は必要?

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このように、集団での意思決定では、皆が集まって議論をすればいいことが導けるとは限らないということを十分認識して取り組む必要があります。

ワークしないワークショップやめ、少数チームで挑戦を

先日、とある自治体の責任者が私のところに立派な冊子を持っていらっしゃいました。お話によると、1年間かけて、その地域の30人ほどが何度か集まり、ワークショップを行い、作成したということでした。デザインされており、綺麗な表紙に参加者の似顔絵までついていました。それに1500万円の税金が費やされたそうです。

皆の意見をたとえ出しあったとしても、それが何か具体的変化を生み出していないとなれば、全くの無駄だと私は思っています。事実、残念ながらその自治体には何の変化も起きていません。やはり彼らが出した結論については、今回のコラムで指摘した通り、多くの問題が含まれていました。皆が議論し、合意したからといって地域を救えるわけではないのです。本当に無益なことです。

責任をとらない100人の意見を集めるより、行動する1人の覚悟のほうが尊いのです。

小さなチームが自ら取り組みを始める時に、いちいち合意形成などというものは気にせず、「衰退をさせている問題の解決に必要なトライ・アンド・エラーをどんどんやってみよう」という状況に地域をもっていくことが大切です。

「稼ぐまちが地方を変える-誰も言わなかった10の鉄則」(NHK出版)が発売に。筆者の17年間の挑戦における失敗などについても触れ、地域活性化を進める上で有効な10の鉄則をまとめています。

小さな取り組みが失敗したところで、地域への影響などたかが知れています。どんどんやってみて、残ったものこそが正解なのです。答えはやってみないとわからないです。

そして最初に皆の同意をとらずとも、やって成果がでれば、賛同者はどんどん増えていきます。合意形成は最初にするものではなく、やった結果をもってなされるべきものなのです。

今回のコラムで見てきたように、集団意思決定には、常に落とし穴があります。

単に合意形成を重要視し、皆が合意すれば地域の取り組みはよいものになる、という思い込みを捨てましょう。話しあいや調整ばかりして、挑戦する人々を潰すのではなく、挑戦する人を尊敬する。そのことから始めると、地域における取り組みは、もっと飛躍的に面白くなっていくと思います。

木下 斉 まちビジネス事業家

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きのした ひとし / Hitoshi Kinoshita

1982年東京生まれ。1998年早稲田大学高等学院入学、在学中の2000年に全国商店街合同出資会社の社長就任。2005年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業の後、一橋大学大学院商学研究科修士課程へ進学、在学中に経済産業研究所、東京財団などで地域政策系の調査研究業務に従事。2008年より熊本城東マネジメント株式会社を皮切りに、全国各地でまち会社へ投資、設立支援を行ってきた。2009年、全国のまち会社による事業連携・政策立案組織である一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立、代表理事就任。内閣官房地域活性化伝道師や各種政府委員も務める。主な著書に『稼ぐまちが地方を変える』(NHK新書)、『まちづくりの「経営力」養成講座』(学陽書房)、『まちづくり:デッドライン』(日経BP)、『地方創生大全』(東洋経済新報社)がある。毎週火曜配信のメルマガ「エリア・イノベーション・レビュー」、2003年から続くブログ「経営からの地域再生・都市再生」もある。

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