「地方消滅」。このセンセーショナルな言葉で全国的な議論が巻き起こってから、早くも1年がたちました。民間研究機関である「日本創成会議」がまとめた「消滅自治体リスト」は大きな波紋を呼びました。「人口減少で、このままでは896の自治体が消滅しかねない」「地方自治体の経営は破たんする」といった警鐘をきっかけに、政府は地方の活性化策に一段と力を入れるようになりました。
現在は「少子化対策」と「地方活性化」をひとセットにして、「若者よ、地方に行け」といった各種政策も展開されようとしています。しかしながら、局地的には増加があったとしても、東京へ人口が集まる大きな流れは未だ変わる気配はありません。むしろ、逆に加速さえしそうな気配さえあります。「東京都の人口(推計)」の概要(平成27年5月1日現在)などを見ても、それは明らかです。
人は「供給側の論理」で移動するのか
そのような中、早くも若者を地方へ向かわせるのは無理だと思ったのか思わないのか、6月4日、「日本創成会議」は新たな提言をまとめました。ひとことでいえば、「今度は東京圏の高齢化が大変。このままだと首都圏では高齢者の増加で医療・福祉がパンクしてしまうので、高齢者の皆さん地方に行きましょう」という話です(詳しくは「東京圏高齢化危機回避戦略」を参照)。昨年の提言は「若者×地方活性化」(少子化対策)でしたが、今度は「高齢者×地方活性化」(高齢化対策)というわけです。
実は「高齢化で、首都圏で病床や医者が足りなくなる」という問題は、長らく議論されてきた内容です。
政策として重要なのは、リアリティであると思います。
これまでも、東京だけでなく、地方の政令市や中核市などの人口は総じて増加してきました。周辺都市部からの流入が進むからです。都市部に人口集中が進むのは、若者にとってはさまざまなメリットがあるからです。その最たるものは雇用機会でしょう。また、高齢者にとってもさまざまなメリットがあるから都市部に移住するわけですが、理由の一つが、医療福祉サービスの観点からということも、あるでしょう。
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