密かに加速「旧ジャニーズ起用再開」の正しい見方 目黒蓮さん起用のFENDI、キャスティング再開のフジテレビ…

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一点、補足しておきたい。旧ジャニーズ事務所は、昨年9月に「今後1年間、広告出演並びに番組出演等で頂く出演料は全てタレント本人に支払い、芸能プロダクションとしての報酬は頂きません」と宣言している。このことは、発表時は場当たり的な対応として批判を浴びたし(筆者は擁護したが)、現在では忘れ去られてしまっている。ただ、これは現在でも続いている。メディアやスポンサー企業が支払ったお金はSMILE-UP.社には残らず、全額タレントに支払われることになることは留意しておきたい。

3つ目であるが、SMILE-UP.社を退所して別の会社に移籍するタレントも出ており、彼らのテレビやCMへの出演も見られている。「退所すれば起用するが、残れば起用しない」と考えている企業もあるかもしれないが、その選択は果たして妥当なのか?という問題もある。

STARTO社が正式稼働するのであれば、独立したり他事務所に移籍したりするよりも、STARTO社との契約に移管するのがタレント活動の継続において有効ではないかという考え方は当然生じてくる。

滝沢秀明氏が率いるTOBEに移籍した平野紫耀さんは、サントリージン「翠(SUI)」、デジタルハリウッド大学のCMに相次いで起用され、大きな話題を集めている。旧ジャニーズ事務所から独立・移籍したタレントが、忖度や圧力を受けることなく、テレビ番組やCMに起用されるのは好ましい傾向だ。

ただし、懸念点もある。SMILE-UP.社はジャニー喜多川氏と完全に決別して企業名まで変えている一方で、ジャニー喜多川氏の「側近」と言われた滝沢秀明氏は性加害問題に関して見解を表明することなく、旧ジャニーズ事務所のタレントをマネジメントする会社であるTOBEの社長を務めている。

SMILE-UP.社のタレントの起用はダメで、TOBEなら良いのか? 突き詰めて考えると、判然としない感じもしてしまう。

どこまで追及し、どこから許容するのか

ジャニー喜多川氏の性加害事件は、加害が行われた期間も長く、被害者も非常に多い。完全に問題が解決することはないし、過去の清算には長い時間を要するだろう。

しかしながら、形は大きく変わってもビジネスが継続される以上、どこかで区切りを付けることは必要になる。どこまで厳しく追及し、どこから許容をするのか。

メディアも一般企業も、各社がそれぞれの基準で判断すればよいことだが、時間が経過する中で問題が風化していき、なし崩し的に起用が進んでいく可能性もゼロではない。各社とも自社なりの判断基準を中にきっちり持っておくことは必要になっていくだろう。

TBSは2月28日に公式サイトに「旧ジャニーズ事務所問題に関する特別調査委員会による報告書」をアップした。他のメディアや広告主企業も、この問題を過去のものとすることなく、将来に向けた対策をしっかり提示していくことが求められる。

西山 守 マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授

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にしやま まもる / Mamoru Nishiyama

1971年、鳥取県生まれ。大手広告会社に19年勤務。その後、マーケティングコンサルタントとして独立。2021年4月より桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授に就任。「東洋経済オンラインアワード2023」ニューウェーブ賞受賞。テレビ出演、メディア取材多数。著書に単著『話題を生み出す「しくみ」のつくり方』(宣伝会議)、共著『炎上に負けないクチコミ活用マーケティング』(彩流社)などがある。

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