和田秀樹「認知症予防に脳トレは無意味」語る根拠 脳の活性化に有効なのは「他人と会話すること」

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そのなかの3番目、認知症リスクを4%下げるとされたのが「社会的孤立」です。孤立を避け、仕事や遊びで家族や仲間との交流を持てば身体活動も精神活動も増えて、脳機能の維持に役立つというわけです。

同様に、国立長寿医療研究センターのあるグループが65歳以上の約1万4000人をおよそ10年間にわたって追跡調査した結果でも「配偶者あり」「同居家族の支援あり」「友人との交流あり」「地域のグループ活動に参加している」「就労している」という5項目のすべてを満たす人は、0~1項目しかあてはまらない人に比べて認知症リスクが46%低いとしています。

独居のほうが認知症の進みは遅い

ただし、ここで注意をしなければいけないのは『ランセット』の挙げた「社会的孤立」は、決して「独居の高齢者」を指したものではなく、「社会との接点の有無」を言っているという点です。

たとえ一人暮らしであっても、自発的に社会との接点をいろいろとつくることはできます。老人会や地域サークルに参加するのもいいですし、今はたいていの高齢者がスマートフォンを持っているでしょうから、そこでSNSを活用してみるのも一種の社会交流です。

認知症の進行度合いを見た時に、「独居のほうが遅い」こともわかっています。朝起きて布団をたたみ、朝食をつくり、散歩に出かけ、近所の人と顔を合わせれば世間話をする。そんな毎日のことが認知症の進行を遅らせるのだと考えられます。

家事をこなすことは適度な運動になり、同時にかなり頭を使います。とくに料理は「どんな献立にするか」「冷蔵庫のどの材料を使うか」「足りないものは別のもので代用するか」等々、調理を開始する前から考えることがたくさんあります。

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