旭化成の内なる危機感、新規事業を生み出せ!
分社化で芽生えた自立心 一方で縦割りの弊害も
実は「融合」をキーワードにする新プロジェクトの発足を裏返すと、旭化成が直面する課題にたどり着く。複数の社内関係者が「現状のままでは今後に勝ち残る決め手を欠く」と危機感を募らせているのだ。
一つは縦割りの弊害だ。旭化成は03年に持ち株会社体制に移行、主要事業を分社化した。各事業会社ごとの独立採算体制により、赤字事業が明確化され、厳しい改革が進んだ。
「事業会社ごとに自立心が芽生え、スピード経営ができるようになった。今も有効な仕組みだ」。堀本成宏経営戦略室長はこう評したうえで、課題にも言及する。「ベンチャー的な取り組みはやりにくい」。
持ち株会社・分社化は、従来あったといわれるもたれ合いを解消した一方で、グループの一体感を薄めているとの指摘もある。事業会社ごとの取り組みが近視眼的になりがちで、一つのテーマにバラバラに取り組む非効率性も生んだ。藤原社長も「以前の体制だったとしても同じことは起きたと思うが、(分社化による弊害は)認識している」と認める。
これからプロジェクトは、これにくさびを打つ。たとえば、環境・エネルギー分野では、4月以降、蓄電装置や太陽電池などの次世代型製品に関連した事業開発を、複数の事業会社の担当者が一体で取り組むようになった。担当者の意見交換を日常耳にしている稲田常務は「少しずつだが意識の変化を感じる」と明かす。
途絶えてしまった新規事業 多角化こそが最大の強み
危機感はそれだけではない。ここしばらく新規事業を創出できていない、という事実がある。
今年で設立80年、源流である曾木電気(現チッソ)が誕生した1906年から数え105年になる旭化成は、アンモニア合成化学や化学繊維、火薬といった事業を発端に、次々と新規事業に進出し、事業の大胆な多角化を進めてきた(表)。