旭化成の内なる危機感、新規事業を生み出せ!

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 旭化成は今年5月、今年度から始まった5カ年の中期経営計画を発表した。16年3月期の経営目標は売上高2兆円、営業利益2000億円。総額で1兆円の投資枠を設けた。

ハイポアやANなど、新興国を中心に世界で伸びる製品群の上乗せはもちろん、国内向けの住宅や欧米も含めた医薬など、競争力のある既存事業を一層強化する方針だ。

だが、これらはあくまで従来路線と変わりがない。今回の中計発表と同時に初めて明かされた「これからプロジェクト」と称する新規事業戦略。これこそが、変革の目玉である。

これからプロジェクトは、「環境・エネルギー」「住・暮らし」「医療」の3テーマについて、グループ一体で新ビジネスを創出する取り組みだ。今年4月にグループを横断する社内組織も新設した。各組織には専任者と、各事業会社にも籍を置く兼任者を組み合わせて配置した。

従来との違いは、おのおの独立した事業会社が相互連携する仕組みを構築したことだ。外部企業との提携やM&A(企業の合併・買収)も活用する。さまざまな素材や機器、サービスなどの商材を、テーマに沿って融合したシステム型事業を作る。

医療分野では、「救命救急医療」や「細胞・再生医療」などの課題を設定。これらに対し医療機器や医薬を軸に、エレクトロニクス部門が得意とするセンサーや住宅など「ほかの医療系企業にはあまりないノウハウを組み合わせる。M&Aも時間をかけずに進める」と吉田安幸専務・医療新事業プロジェクト長は強調する。住・暮らし分野では「グループ企業も含めて十分に生かし切ってない力を使い、たとえば生活サポートなどの事業を創出していく」(旭化成ホームズの平居正仁社長)。

新中計の発表に先駆け、環境・エネルギー分野では、急速な充放電が可能な蓄電装置であるリチウムイオンキャパシタについて、富士通グループのFDKと合弁会社を設立することで今年4月に基本合意。8月に新会社を立ち上げる。「FDKにはモジュール化や量産の技術がある。当社が不得意なところやノウハウを持ち合わせていない場合では他社と組む」と環境・エネルギーの新プロジェクトを統括する稲田勉常務・新事業本部長は話す。

旭化成は今後5年間の投資枠1兆円のうち、4500億円もの資金を新規分野に投じる。これからプロジェクトは16年3月期に1000億円、21年3月期には3000億円の売り上げ創出を目指している。ゼロから立ち上げることを考えれば、かなり意欲的な目標といえる。

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