エフピコの日本初の食品用PET再生工場が本格稼働、最新鋭設備備えた中部リサイクルセンターを訪ねる

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 一方、透明容器は人が見ても素材の判別ができないので、近赤外線を使ってPET、OPS(二軸延伸ポリスチレンシート)などに分別する。イチゴなど果実のパックや、飲料ボトルで使われるPETは、食品容器としても使い勝手のよい素材だが、熱に弱いという弱点があった。エフピコでは、PET素材を延伸することで、素材の強度を増すとともに耐熱性を高めることに成功した。すでに、素材を高温で一方向に延伸する一軸延伸PETを商品化、横と縦に延伸する二軸延伸PETを12年春に市場投入する計画だ。二軸延伸を行うと、シートの厚みが従来品の半分程度まで薄く、軽量化できるうえ、摂氏80度まで耐熱性を高めることができる。

中部リサイクルセンターに新設されたPETリサイクル工場では、PETボトルのラベル除去、粉砕、洗浄などの工程を経た後、200度の高圧真空状態を保つことで食品容器として利用できる良質なPET原料を生産できる。食品を入れていたPETだけが回収されるのであれば高圧真空状態は必要ないが、まれにガソリンなどを入れたPETボトルがリサイクル工場に持ち込まれることもありうる。エフピコが設置したドイツ製のマシンでは、ガソリンなどの揮発留分を除去可能で、そのまま食品用PETとして再生できる。5月には米国食品医薬品局(FDA)の認可を得た。

ただし、国内では再生PETに関する法制度が未整備であるため、現在は中部リサイクルセンターで再生したPETの表面に、わざわざ新品PETを被覆して出荷している。しかし、国内法が整備されれば、リサイクルPET原料だけを使った素材に一軸延伸、二軸延伸をかけて出荷することが可能になる。

「正直なところ、中部リサイクルセンターのPETリサイクル工場だけで採算はトントン。だが、12年には約7億円かけてもう1台ドイツ製マシンを導入する計画だ」。佐藤社長が明かすこの計画が実現すれば、PET処理能力は日量60トンと倍増する。この再生ペットを原料にして弁当容器、総菜容器の透明なフタを生産すれば、耐熱性と価格競争力が大幅に向上できる。

家庭から排出される食品トレーを資源として業容を拡大してきたエフピコが、次の照準と定めたのが、PET再生事業。新たな挑戦のゆくえを見守りたい。


揮発留分除去プラント

(広瀬 泰之 =東洋経済オンライン)

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