また、糖尿病は非常にお金のかかる病気で、アメリカ政府は毎年約3270億ドル(約45兆1260億円)を糖尿病関連の医療費として支出し、医療費として支払われる7ドル(約970円)ごとに1ドル(約138円)が糖尿病のために使われている。
個人の負担額でいうと、もしあなたが糖尿病患者なら、糖尿病でない人に比べて、年間の医療費を2倍以上払うことになると思えばいい。糖尿病でない人の医療費が7151ドル(約99万円)なのに対し、糖尿病患者の払う医療費は1万6752ドル(約231万円)にものぼる。
さらに、規定の診断基準にもとづいて糖尿病ではないとされた場合でも、食後にグルコース値が上がりすぎる人は、かなりの健康リスクを背負うことになる。たとえ医療基準では正常の範囲内でも、血糖コントロールが悪化するにつれて、心血管疾患になったりそれで死んだりするリスクは確実に上がる。
そして血糖コントロールにかかわる最も危険度が高い問題は、「血糖値変動」と呼ばれる状態だ。これは1日のうちに血糖値が激しく変動する状態をいう。
研究によると、糖尿病があってもなくても、日常的な血糖の平均値を決める最も大きな因子はこの血糖値変動であり、昔から言われるリスク因子とは関係なく、糖尿病の合併症を引き起こす最大のリスク因子になっているという。
血糖値の変動が「ミトコンドリア」に影響する
細胞はグルコースを燃料とするため、血糖値が激しく変動したり、ずっと低いままだったり、ずっと高いままだったりすると、疲労を感じる。
また血糖値が安定しないと、ミトコンドリアに悪影響が及ぶせいで、激しい疲れを覚える場合もある。
血糖値が下がりすぎた状態は「低血糖」と呼ばれる。この症状はかなり急性のもので、ひきつけや呼吸停止、心臓発作など突然死を招くこともある。
人間という種が生き残るために、人類は進化の段階で、低血糖を起こさないための強力な予防策をいくつか準備してきた。たとえば、肝臓はつねにグルコースを血中に送り出し、1日を通して血糖値を一定に保とうとするし、血糖値が下がりすぎると副腎が大急ぎでアドレナリンを放出する。