治療が必要なほどの低血糖症はそれほど数が多くないとはいえ、低血糖を軽視するのはやめたほうがいい。成人の3人に1人は食後に低血糖の症状を経験するうえ、これが糖尿病患者の成人になると4人のうち3人にまではねあがる。これはたいてい糖尿病の治療薬のせいだ。
この症状は「反応性低血糖」と呼ばれ、食後2~5時間ほど血糖値が下がりすぎる状態を指す。きっかけはさまざまで、胃が急激に空になったときや、腸ホルモンが過剰に分泌されたとき、過剰なインスリン反応が遅れて起きたとき、インスリン抵抗性が代償性高インスリン血症【訳注/インスリンの効きが悪いために膵臓がインスリンを分泌しつづける状態になること】を引き起こしたとき、または甲状腺機能低下症があるときなどに起きる。
食事のあと血糖値が低いままだと、筋肉や組織、さらに脳のような器官が使えるエネルギーの量も少ないままになる。
食後血糖値が低すぎるとどうなる?
人間の脳にあるニューロンが最も多くのエネルギーを必要とするため、血中からつねにグルコースの供給を受けなければならない。脳の重さは体重のわずか2%だが、グルコースの消費量は体内で最も多い。なんと、グルコースが生み出すエネルギーの20%だ。
とくに、食後に血糖値が低くなりすぎると次のような症状が表れる。
・震え
・めまい
・混乱
・不機嫌
・不安
なかには、実際には低血糖になっていないのに、反応性低血糖を経験する人もいる。これは「突発性食後症候群」と呼ばれるが、なぜこのような症状が起きるかはまだわかっていない(「突発性」とは「原因不明」という意味なのだ)。
血糖の制御にかかわるすべてのホルモンが、正常な血糖値を維持するために多大な労力を消費しているためにこうした症状が表れる、というのがいちばん妥当な説明だろう。
たとえば、インスリン反応が遅れると普通は低血糖になるが、そこにアドレナリンが大量に放出されると低血糖が回避される。しかし、汗や震えといった症状だけは残ってしまう。
こうした場合、細胞は本当に必要とする燃料を十分に得ていないので、疲れを感じるだけでなく、ミトコンドリアも打撃を受ける。高血糖の発作や低血糖の症状が出ると、ミトコンドリアにも機能不全が起きてしまうのだ。
また、血糖値が低くなりすぎると、酸化ストレスが増えて、ミトコンドリアは細胞防御モードに入るため、さらにエネルギー産生量が低下することになる。
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