血糖値が高い人も低い人も軽視してはいけない訳 激しい変動も要注意、疲れを招き命にかかわる場合も

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人間が体を維持していくには、血糖、とくにグルコース(ブドウ糖)が必要だ。

ミトコンドリアは細胞に供給するATP(細胞エネルギー)をつくるために、グルコース(および脂肪と、タンパク質から得たアミノ酸)を使う。だが、ほかに脳のような器官もグルコースを主要な燃料源として使うため、そうした器官がきちんと機能するためにもグルコースの安定した供給が必要になる。

グルコースを供給するのは、炭水化物だ。炭水化物は消化されるとグルコースに分解され、腸障壁を通り抜けて血流に吸収される。それが体中の細胞に送り届けられて、エネルギーをつくり出すもととなったり、後日の使用に備えてたくわえられたりする。

高血糖は「死亡率」を70%上げる

食事をすると、当然血糖値は上がる。それから徐々に下がり、次の食事を摂る前くらいに最低値になる。

このように血糖値が上下するのは普通だが、正常な範囲には厳密な規定値がある。グルコース値が低すぎると、昏睡状態に陥って死んでしまうかもしれない。逆に長期間にわたって高いままだと、血管や神経、臓器に損傷をもたらす恐れがある。

私たちにはグルコースが必要だが、多すぎても少なすぎてもいけないのだ。

だが、数百万もの人が「血糖コントロール不良」という状態に陥っている。これは体が血糖値を安定させる能力を失い、心身の健康とエネルギーレベルに深刻な悪影響を与える状態をいう。

アメリカでは、成人の約42%が前糖尿病段階あるいは糖尿病と診断されている。前糖尿病段階と言われる人はおよそ30%、残り12%が完全な糖尿病患者で、その大部分が2型糖尿病と言われている。

2型糖尿病は、体内の血糖値が慢性的に高く、健康値まで下がらないと起こる病気だ。この病気を引き起こす状態を「高血糖状態」と呼ぶ。

前糖尿病段階や糖尿病は、単なる疲労に比べてはるかに深刻だ。82万人以上を対象に行われた97件の研究をメタ分析した結果、糖尿病になると、血中脂質や炎症、年齢、BMIといったリスク因子を調整しても、死亡する確率(理由はなんでもいい)が70%増加し、ほかの病気による死亡率も3倍以上になるとわかった。

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