与力は賄賂で大儲け?江戸時代の「不正」驚く実態 都市行政に練達しているからこそ便宜を図られた

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言うまでもなく、どれも職権を乱用した行為である。袖の下を受け取ることで、生活の足にしていた同心もいたわけだ。似たような仕事をしていた与力にしても、大差はなかったかもしれない。もちろん、不正が露見すれば処罰されるのは必至である。

時候見舞いにかこつけて謝礼を受け取るなどして、与力・同心側も細心の注意を払っていた。依頼主の方も、与力に何事かを頼む場合は、相応の配慮をしていた。

謝礼を送るのにも一工夫を施す

八丁堀にあった与力の自宅を訪ねるのは人目もあるため、別の場所を設けて密かに面会している。恐らく料亭などが使われたのだろう。

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その際、飲食などの接待が付随したのは言うまでもない。謝礼を贈るのにも、一工夫を施している。

現金ならば、「お菓子」などと箱書きした上で贈っていた。時代劇でよくみられるように、お菓子の下には山吹色が敷き詰められていたのだろう。

「切手」を贈る場合もみられた。これは料理茶屋が発行する料理切手のことで、現在で言えば食事券のようなものだった。

あるいは、1000両の価値がある土地の沽券(こけん)証文を500両に書き替え、その土地を購入してもらう方法もあった。差し引き500両の贈与に相当したことになる。

このように、与力に依頼した事柄が吟味の対象になったとしても、賄賂とは認定されないよう細心の注意を払っていたのである。

安藤 優一郎 歴史家

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あんどう ゆういちろう

1965年、千葉県生まれ。早稲田大学教育学部卒業、同大学院文学研究科博士後期課程満期退学(文学博士)。JR東日本「大人の休日倶楽部」など生涯学習講座の講師を務める。おもな著書に『江戸の間取り』『大名格差』『徳川幕府の資金繰り』『維新直後の日本』『江戸時代はアンダーグラウンド』(彩図社)、『15の街道からよむ日本史』(日経ビジネス人文庫)、『東京・横浜 激動の幕末明治』(有隣新書)、『徳川時代の古都』(潮新書)などがある。

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