与力は賄賂で大儲け?江戸時代の「不正」驚く実態 都市行政に練達しているからこそ便宜を図られた

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この数字には付け届けの品を金銭に換算した分も含まれるが、原家は100家もの大名家から付け届けを受け取ったという(南和男『江戸の町奉行』吉川弘文館)。

要するに、大名たちは保険を掛けたのであり、それはいわば必要経費だった。かたや、市中の見廻りにあたる与力や同心からすると、まさに役得であった。

訴訟の約7割は金銭をめぐる問題

江戸時代は訴訟の多い時代であり、欧米顔負けの訴訟社会だった。大岡忠相(ただすけ)が町奉行を務めていた時代の訴訟件数は、なんと4万7731件にも達している(享保3年(1718)に町奉行所が取り扱った訴訟数)。

その約7割を占めたのが、金公事(かねくじ)と呼ばれた金銭をめぐる訴訟である。4万件もの訴訟を、お白洲で一々裁いたわけではない。和解するよう当事者を勧奨するのが原則だ。その任にあたったのが、吟味方の与力だった。

刑事にせよ、民事にせよ、町奉行所が取り扱った案件は、吟味方与力が対応した。その時与力は、貸金トラブルが訴訟に発展しないよう、調停役を担うことも多々あった。先の佐久間によれば、持ち込まれた訴訟には、徳川御三家や宮門跡(みやもんぜき)が貸主の案件もあった。

宮門跡とは、皇族である法親王(ほっしんのう)が住職を務めた、最上級の格を誇った寺院のことである。御三家は言わずもがな、将軍職を継ぐ資格を持つ徳川家の親族で、大名のなかでは最上級の格を誇っていた。

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