腎臓病と長年闘ったネコの体内で「起きていた事」 飼い主の「この子はなぜ死んだのか」に応える

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慢性腎臓病は長生きしたネコの宿命のようなものですから、明確な原因がないことも多々あります。このネコも、「なれの果て」の腎臓病と尿毒症による病変は観察できますが、腎臓が悪くなった決定的な原因は特定できませんでした。

ただ、飼い主さんに飼育状況を詳しくヒアリングし、もっとも心配されていた飼い方には問題はなかったのだろうと推測できました。

8歳ですでに腎臓が悪くなっていたネコが14歳まで生きたというのは、獣医療の現場においては大往生といえます。

大切に飼われて幸せな生涯だった

死んだ動物の体の中で起こっていたこと
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「決定的な原因はわかりませんが、飼い方に問題はなかったでしょう。それどころか、早めに病気を見つけて、適切な治療を続けてあげていたことで、この子は本来よりもずっと長く生きることができたはずです。大切に飼われて、幸せな生涯だったと思いますよ」

獣医病理医としての客観的な見解を伝えると、飼い主さんは感極まったのか、声を震わせて泣き出しました。

「この子の病気がどこまで進行していて、どのようにして亡くなったかを知ることができました。病理解剖をしてもらってよかった……」

「病理解剖をしてよかった」

依頼主からしばしばいただくこの言葉に、ぼくはいつも報われる思いがします。

中村 進一 獣医師、獣医病理学専門家

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なかむらしんいち / Shinichi Nakamura

1982年生まれ。大阪府出身。岡山理科大学獣医学部獣医学科講師。獣医師、博士(獣医学)、獣医病理学専門家、毒性病理学専門家。麻布大学獣医学部卒業、同大学院博士課程修了。京都市役所、株式会社栄養・病理学研究所を経て、2022年4月より現職。イカやヒトデからアフリカゾウまで、依頼があればどんな動物でも病理解剖、病理診断している。著書に『獣医病理学者が語る 動物のからだと病気』(緑書房,2022)。

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