災害時の明暗分ける「立地のリスク」の深刻度 「水や食料を買い込んでおけばよい」ではない

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決して、災害リスクがある「土地が悪い」「住むな」というわけではありません。先祖の土地、親が建てた(買った)家、愛着のある地域のコミュニティなどは、かけがえがないものでしょう。

伝えたいのは、今住んでいる場所にどのようなリスクがあり、いざ災害が起きたら避難が必要になるかどうか、優先すべき対策はなにか、いざというときにどのような行動をとるか、といったことを、普段から家庭や地域でよく確認し、考えて、対策を実施しておいてほしい、ということです。

液状化のチェックポイント
液状化が起きる可能性がある立地かどうかを評価するチェックリスト(出所:さくら事務所

残念ながら現状の制度においては、ただ待っているだけでは、災害リスク情報は教えてもらえません。

最近はハザードマップもPCやスマホから住所で検索が可能であったり、自治体がアプリ化したりしているところもあります。立地の災害リスク情報は自ら取りに行き、調べ、知っておくことが求められるのです。

災害リスク対策の流れ

自宅と家族を守るため、特に事前に避難できない地震を中心とした災害リスク対策の流れは、

① 立地のリスクを特定する
② 建物の耐震性を高める
③ 家の中でケガをしないための家具配置や間取りにする
④ 家具の固定や備蓄の準備

というステップになると考えています。決して、水や食料だけ買い込んでさえおけばよい、というわけではないのです。

立地のリスクを知った住み方や土地選びが進むことで、大地震や台風接近時などの被害が軽減され、大事な人や自宅に被害を受ける人が少しでも少なくなることを願っています。

横山 芳春 だいち災害リスク研究所 所長・地盤災害ドクター

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よこやま よしはる / Yoshiharu Yokoyama

地形と地質、地盤災害の専門家。早稲田大学大学院理工学研究科博士課程を修了、関東平野(茨城県南部全域の常陸台地)の地形・地質のなりたちに関する博士論文で博士(理学)の学位を取得。早稲田大学理工学総合研究センター勤務ののち、国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質情報研究部門(旧・通産省工業技術院 地質調査所)などで研究に従事。現在は、さくら事務所が運営するシンクタンクだいち災害リスク研究所所長として、災害が起きた際には速やかに現地入りして被害を調査。地盤災害のプロフェッショナルとして活動している。

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