慶應理工学部が「村上春樹作品の英訳」出題の衝撃 22年度入試まで英作文問題は出題されなかった
ここは、東大生の中でも意見が分かれるポイントでした。とある東大生は、前後の文章を読むと、「故郷に呼び戻される」というような内容なので、物理的に誰かから引っ張って戻されているのではなく、自然と意識が戻されるということを示していると解釈していました。
物理的と解釈すると、この問題はこんな回答になります。
Some can't help being dragged back home again and again, and some on the other hand feel for good that they may no longer go there.(東大生Aの回答)
「being dragged back」で、「引っ張って戻される」という意味ですね。「can't help」=「せずにはいられない」という表現を使って、「故郷に引き戻される」を「引っ張って戻されざるをえない」という回答を作っています。なかなか面白い回答ですね。
それに対して、「これは全体の文脈で見れば、故郷のことをいつも『意識』しているかどうか、というのを『引き戻される』と言っているのだから、ここは『いつも思い出される』くらいの解釈でいいはずだ」と言っている東大生がいました。その東大生は、「remember」という英単語を使ってこんなふうに回答を作りました。
Some always remember their hometowns, whereas some think they couldn't come back. (東大生Bの回答)
シンプルで、緊張状態かつ時間のない試験会場で答えを作るのであれば、これくらいの回答になるのではないかと思います。
「引き戻される」をどう解釈する?
ただし、「引き戻される」を「remember」で解釈してしまう回答は、もしかしたら減点されてしまう可能性があります。なぜなら、下線部の後ろにこんなことが書いてあるからです。
「両者を隔てるのは、多くの場合一種の運命の力であって、それは故郷に対する想いの軽重とはまた少し違うものだ。」
ここで「想いの軽重とは違う」と書いていることから、ここは物理的なものだと解釈してもいい可能性があるのです。
また、最初の具体例(新幹線で東京に戻る、の部分)をみると、こちらも実際に「想い」ではなく「物理的」に自分の身体が故郷に引き戻されるかどうかという話をしているので、やはりここは、「物理的」と解釈した東大生Aの回答のほうが正しいのではないかと考えられます。(他の人の回答はこちらをご覧ください)
いかがでしょうか?「引き戻される」の解釈だけでこんなにいろんなことが考えられることからもわかるように、この問題は、英語の問題かと思いきや、文章の解釈・文学的な思考が求められる国語の問題だったと言えます。
これからの大学入試では、英語の文章を読む力だけでなく、表現したりする力や、そもそも日本語の読解力も求められるようになると言えます。今後も大学入試の変化に目が離せませんね。
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