「失敗を転機に」"私立中退学"若手起業家の視点 坂井風太さん「レールから外れても怖くない」

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いま、坂井さんの発信がビジネスパーソンたちから支持されている理由は、組織にいる人間なら誰もが感じるモヤモヤを明快かつ鮮やかに図解・言語化している点だ。

「なぜ若者は数年で会社を辞めてしまうのか」、「昔は勢いがあった組織でもなぜ硬直を起こしてしまうのか」、「仕事ができる上司がうまく部下を育てられないのはなぜか」など、業種や規模にかかわらず、実はどの会社も同じような悩みを抱えている。

「どんな一流企業でも人材育成やマネジメントはきちんと体系化されていないことが多く、部下を育てる立場になっても正しい人材育成理論を理解している人はほとんどいないのが実情です。人材育成はその人が育ってきた体験やセンスなど、自己流に頼ってきた部分が大きいのです」

坂井さんが新卒で入ったディー・エヌ・エーでもそうであったという。就活でも人気の高いメガベンチャーだが、その当時、採用に関するノウハウはあっても、確立された人材育成システムはなかった。

つまり同じ会社に入ったとしても、配属やついたメンターによって仕事環境は大きく変わってしまう。そして、採用に注力しても、育成が弱ければ、せっかくの人材の才能も枯れてしまう。

負のループから復活して気づいたこと

坂井さん自身、入社1年目は苦しんだ。

「最初に配属された部署で、何をやってもメンターにダメ出しをされ、どうしたらいいのかわからなくなってしまったんです。当然挑戦もできなくなり、自分をダメだと思ってしまう。

そのような絵に描いたような負のループに入っていました。後から思い返すとこれは『ゴーレム効果』と呼ばれるもので、周囲の否定的な声かけにより自信を失ってしまっている状態でした」

しかしこの経験は皮肉にも坂井さんが人材育成の大切さに気づくきっかけになり、その後社内で独自の人材育成プログラムを構築するまでになる。

2年目に別の部署に移るとメンターも変わり、息を吹き返すように復活した。

「1年目と2年目で私の能力が急激に成長したわけではありません。違ったのはメンターの声かけです。『前よりもここができるようになったね』『どうしてそれができたのかちょっと話してみてよ』などと言われ、自分が成長していることに気づくようになったのです。

これは『今までやったことないけどできる気がする』という『自己効力感』を育てることにもつながります」

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