「失敗を転機に」"私立中退学"若手起業家の視点 坂井風太さん「レールから外れても怖くない」

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「中2ぐらいからなぜか『普通でありたくない』という思いが強くてグレていました。いま振り返れば、自我が不安定な時代で、他の人との「差異化」を目指していたのだと思います。

『どうして普通になれなかったの?』と教師に言われましたが、『普通とは何か』がわからず、その時から『人が決める普通とはなんだろう』という問いも生まれ始めました。

自分が悪かったと思うし、学校に対しての恨みはないです。そこから心理学・社会学・精神分析学などの本も読み始めたので、いま思うと良い転機になったと思います」

自分にしか作れない価値を掘り起こす

退学して1週間ぐらい塞ぎ込んでいたというが、心を切り替えて高校受験の勉強を始め、進学校の横浜翠嵐高校(横浜市神奈川区)に合格する。

このときから「一度レールから外れても、またコツコツとした努力で戻ればよい」という自己効力感が生まれたというが、そう考えられたのにはもともとの家庭環境も影響しているという。

「大企業を飛び出して起業した父親が事業に失敗して自己破産状態になったり、医学部2浪した兄が結局別の学部に行ったり。

ただ父もその後たくましく生きていますし、兄は大学進学後にラジオのパーソナリティーになり、今では大企業の海外担当で、(自称)出世頭らしいですし、もがいていれば、どこかに着地できるものです。

そんな父や兄を真近で見ていて、『レールから外れることは怖くない』と思えたことは大きいと思います」

「中学の退学は挫折ではなかった」と改めて認識したのは就活の時だったという。

「就活面談の時、中学退学の話は転機経験として、ネタになったんです。挫折体験って人生の儲けものだな、と。今までの自分の人生を全肯定できました」

とはいえ、失敗や挫折経験を多くした人の方が偉い、という価値観にも違和感を覚えるという。

「例えば受験に失敗したとしたら自分はダメな人間だと思うか、人の痛みがわかる人間になった、と思うか。受験が成功して第1希望のところに行けたら、自分は努力してちゃんと成し遂げられる人間なんだと思えばいい。

失敗だろうが、成功だろうが『自分が経験して葛藤した物事』が大事であり、それが自分自身を形作るものになるのです。そもそも、自分にしか作れない価値は、自分の人生の中に眠っているはずです」

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