「GDP4位転落」日本に数学嫌い克服が必要な理由 「何の役に立つのかわからない」というイメージ

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ところで、「なぜ暗記だけの算数・数学の学びが盛んになってしまったのか」ということを自問すると、やはり「答えさえ当てればよい」数学マークシート問題が本質にあるだろう。

1979年に導入された全問マークシート式の「大学共通1次学力試験」がスタートした前後で、数学の問題解法に関する生徒の意識で大きな変化があった。それまでは「数学は答えを導くためのプロセスが大切」というものが大半であったが、その後は「記述式問題を除けば、答えを素早く当てるテクニックも大切」という意識が広く浸透したのである。

ノーベル物理学賞受賞者の言葉

この件に関して筆者は、90年代から著書・雑誌・新聞等で「数学マークシート問題で裏技等を使って答えを当てることと、数学が好きになることは無関係である」と、事あるごとに訴えてきた。その気持ちを支えたのは、2008年に素粒子の研究でノーベル物理学賞を受賞された益川敏英さんが、受賞後の記者会見で「マークシートを使った現在の試験は改めたほうがよい」と述べられたことである。記者会見では基礎科学の充実を訴えると思っていただけに、そのときの感動は一生忘れられないものとなった。

さて、当たり前のことであるが、22年間勤めた城西大学数学科と東京理科大学数学科には「数学嫌い」の学生はいなかった。2007年に東京理科大学理学部から移った桜美林大学リベラルアーツ学群には、反対にたくさんの「数学嫌い」が在籍していた。

リベラルアーツの語源には算術、幾何、論理などがあるので、その立場からも「数学嫌い」を減らす活動には適当な環境であった。筆者の担当科目は、数学嫌いの学生が多く履修するリベラルアーツの考え方を示す「学問基礎」、数学好きな学生が受ける専門の数学科目、教職の数学科目、それにゼミナール等であった。

勤め始めた数年後に就職委員長を補職としてお引き受けした当時は学生の就職難で、就職適性検査の非言語問題が苦手な学生向けに、後期の毎週木曜日の夜間に「就活の算数ボランティア授業」を2コマ開催した。この授業は後に「数の基礎理解」として正規の授業になって退職年度まで続けた。「学問基礎」と「数の基礎理解」を通して、数学嫌いな学生を相当多く数学好きにさせたと振り返る。数学が嫌いで文系専攻のつもりで入学したものの、ゼミナールは数学専攻の筆者のところに参加した学生は毎年何人もいた。

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