『不適切にも』TVにとっての"コンプラ"現在地 クライマックスをミュージカルにするのはなぜ

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とはいえ、クドカン脚本ならではのコメディの魅力は健在で、キョンキョンら当時のアイドルや聖子ちゃんカットのような若者の流行など小ネタやオマージュも満載。

さらに純子とキヨシ、純子が憧れるムッチ先輩(磯村勇斗)の3人、そして小川と彼が令和で出会う犬島渚(仲里依紗)という2組の恋愛と友情もコミカルに描かれ、変に理屈っぽいものではない。

社会のコンプラ、テレビのコンプラ

だが全体の軸になっているのは、やはりコンプラを軸にした昭和と令和の対比である。見ていると、「昭和と令和はこんなに違っていたのか」と改めて思わされる。

たとえば、タバコ。昭和の場面では、小川をはじめとした大人たちがところかまわずタバコを吸っている。職場の中は煙で充満。またバスの座席にも灰皿がついていて車内で吸うのもOK。いまなら考えられない光景である。

社会のルールや価値観も、昭和と令和では大きく変わっている。第1話と第2話では、特に職場のことがテーマになっていた。

第1話では、秋津真彦(磯村勇斗の二役)が会社の後輩にハラスメントで告発されている。秋津はただ「頑張ってね」と言っただけなのにと戸惑うが、会社の担当者は、いまはそういう時代だとまったく受けつけない。

するとその居酒屋にたまたま居合わせた小川が頑張れと言っちゃなぜいけないのかと反論し始める。

また第2話では、テレビ局のバラエティ番組制作部署に勤める犬島が、産休から復帰した途端に働き方改革の波にもまれ、思うように自分のペースで仕事ができなくなり苦悩する。

しかし上司は犬島の訴えを聞く耳をもたない。そこに犬島への届け物を持った小川が現れ、昭和の働きかたのどこがいけないのかと口をはさむ。

そして最新の第3話では、下ネタ満載の昭和のテレビ番組とセクハラに過剰なまでに配慮する令和のテレビ番組が対比的に描かれる。

そして配慮のしすぎでどうすればよいかわからなくなった令和のテレビ関係者たちに、「出演する女性が自分の娘なら」という想像力をいつも働かせればいいのではないかと小川が訴える。

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