早急に海底活断層評価を、地震学の専門家が警鐘 能登半島地震で、政府の対策の遅れが露呈

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――今回の地震では、地震の規模(モーメントマグニチュード7.5)や最大4メートルとされる地盤の隆起の大きさなどについて、専門家の間でも驚きの声が上がっています。

能登半島地震では、約150キロメートルにわたっていくつかの断層がドミノ倒しのようにずれ動いたと言えます。約150キロメートルというのは、糸魚川静岡構造線という本州を東西に引き裂く陸域の巨大活断層に匹敵する長さです。

国土交通省が2014年に発表した「日本海における大規模地震に関する調査検討会報告書」に掲載された津波断層モデルの位置図。能登半島沖にも断層モデルが設定されている(出所:国土交通省「日本海における大規模地震に関する調査検討会報告書・図表集)

その結果として、地震の規模はモーメントマグニチュード7.5と、非常に大きくなりました。海岸の隆起が最大で4メートルになったことも大変な驚きでした。能登半島の地質地形から推定すると3000~4000年に1回くらいの頻度で大規模な隆起が起きてきたとみられます。今回、私たちはそうした、ある意味で奇跡的な瞬間を目撃したことになります。

――能登半島のような大規模な隆起による地形はほかの地域でも見られるのでしょうか。

北海道から青森県の日本海側、秋田県、山形県、新潟県、能登から福井県の越前海岸、若狭湾にかけて、海岸線に顕著な隆起地形がみられます。

能登半島の周辺部では、大きめの地震に注意を

――今回の地震では津波の到来の早さも注目されました。

日本海で起きる津波の特徴として到達の早さを指摘できます。これは、海底活断層が陸地に近いところにあるためです。富山県の沿岸部では、能登半島地震の発生からわずか2分程度で第一波が来ています。海底の斜面が地滑りを起こして津波を引き起こしたためです。津波の到来は想定の4~5分よりはるかに早かったと言えます。

――NHKのアナウンサーが「すぐに逃げてください」と呼びかけ、気象庁が石川県沿岸に大津波警報を発令しました。

呼びかけ自体は的を射たものですが、実際の津波は大津波警報の発令以前に来ています。海岸線に近い地域に住んでいる方は、大きな揺れを感じたらすぐに高台に避難するくらいの心構えを持っておく必要があります。

――今後の大きな地震の可能性はどうでしょうか。地震の回数自体は次第に収まっているようですが。

ひずみが解消されたので、今回の地震の震源域で同じ規模の地震が起きるということはないだろうと思います。他方、気になるのは断層帯の周辺部です。断層帯の東西に位置する志賀町の沖合や佐渡島の沖合などではひずみが残っている。そうした断層帯の端の部分で地震が起きやすい状態が続くと見られ、大きめの地震に注意が必要です。

金沢市から富山市のあたりでも地震が増えています。ほとんど身体に感じない、マグニチュード1~2程度の地震ですが、普段の数倍から10倍くらいの頻度で発生しています。佐渡島のあたりでも回数が多くなっています。

石川県の中部には邑知潟(おうちがた)断層という大きな断層がありますが、そこにもひずみが加わっている可能性があります。今回の能登半島地震の震源から100キロメートル以内のエリアでは大きめの余震がいつ起きてもおかしくない状況です。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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