がんで地方移住した男性が感じた「よかったこと」 治療中や治療後の「生活環境」という盲点

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「新型コロナに罹患して高松より東京のほうがよかったと思いましたか」と尋ねると、Uさんは「間質性肺炎によって損傷した肺細胞を再生できるのは幹細胞だけ。その幹細胞点滴治療を行っているクリニックは香川県にはなく、一番近くて岡山県だけ。しかし2時間しか持たない酸素ボンベでは通院するのは物理的に無理でした」と振り返っていました。

そして、「幹細胞点滴治療を受けられたとしても毎回10万円を超えるコストがかかります。近くでその治療が受けられたら安易に幹細胞点滴治療を受けていたかもしれません」と考えています。何か幸いなのかはわかりません。

ただ、「今でも肺の2割は損傷しているはず」で、まだ走ったり階段を駆け上がったりは不可能だそうです。でも2022年の秋くらいからゆっくりと仕事の再開に動きだしています。

異業種交流会に少しずつ参加し、子ども向けの無料スクールの開催などから始めて高松でのネットワークを構築することからスタートです。ファイナンシャル・アドバイザーの仕事は何よりも信頼されることが大切ですから、じっくり基盤を作っていくつもりとのことです。

「十分な治療」意外に必要な視点

2人の方のインタビューの後、自分なりに考えたのは医療サービスとは何かということでした。確かに病気になるのは嫌ですし、十分な治療が受けられないことで症状が悪化するのも避けたいものです。

ただ、それだけが医療なのか、治療中・治療後の生活の質(QOL)まで考えてみると、答えは1つではないように思います。現役時代の目線だけで考えないことが大切ではないでしょうか。

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野尻 哲史 フィンウェル研究所代表

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のじり・さとし / Satoshi Nojiri

一橋大学卒業後、内外の金融機関を経て2019年から現職。退職世代向けのお金との向き合い方に特化して情報発信を行う。『IFAとは何者か』(共著)など著書多数。

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