懸命に働く人に教えたい「社畜化」せず生き抜く術 経済評論家・山崎元が指南する「これからの働き方」
会社の利益はどこから発生するのだろうか。「資本」という雑多な財産が入ったプールの周辺にいる利害関係者を見てみよう。
結果的に利益が出るとすれば、資本か労働かいずれかに起因するはずだが、この際「資本を利用する労働」に注目しよう。
ある典型的な労働者が、一日に会社にとって平均的には2万円の利益に相当する生産に関わっているとしよう。一方、この労働者に対して会社が払うべき賃金は1万円だとする。資本には1万円相当の利益が貯まる。
このようにして貯まった利益の一部は、銀行からの借り入れに対する利息や返済に回されるだろうが、その残りは株式を通じて資本家のものになる。
資本設備を増やしながら、このような条件での労働者の雇用を拡大することで、会社は規模を大きくして、利益を拡大することができる。
なお、新製品の発明や生産方法の改善のような大きなものから、商品の売り方のような小さなものまで含めた技術進歩も企業の利益の源泉になっていて、比較的頻繁に発生しているが、この利益も資本のものになりやすい。
リスクを取りたくない労働者が安い賃金で我慢する
先の、2万円の生産に貢献して1万円しかもらわない労働者が、不満で不本意なのかというと、そうでもない。彼(彼女)は、たとえ一日に1万円でも、安定した雇用と安定した賃金を求めているからだ。
安定(=リスクを取らないこと)と引き換えに、そこそこの賃金で満足する。合意の上の契約だ。彼らこそが、世界の養分であり経済の利益の源なのだ。
世の中は、リスクを取りたくない人が、リスクを取ってもいいと思う人に利益を提供するようにできている。
労働者は、もう少し高い賃金を求めて雇用者側と交渉するかもしれない。しかし、この交渉がうまくいくとは限らない。
この労働者と同じような貢献をすることができる「取り替え可能な労働者」が他にもたくさんいて、彼らが一日1万円でも雇ってほしいと思っているなら、雇う側には取り替え可能な労働者を選ぶ選択肢がある。
会社側は、なるべくこのような状況が可能になるように、社員の仕事の設計を行うだろう。「ずるい!」と言いたいかもしれないが、これは普通の経営努力だ。
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