懸命に働く人に教えたい「社畜化」せず生き抜く術 経済評論家・山崎元が指南する「これからの働き方」
一方、働く側から見ると、自分自身が「他人と取り替え可能な労働者」にならないような工夫が必要だということだ。
労働者に限らず、工夫のない人は損をする。これは、責任論以前の経済の現実だ。他人と同じであることを恐れよ。無難を疑え。
資本のプールに貯まった利益を取り合うにあたって、銀行など資金を提供する側の立場が強ければ債権者の取り分が多いだろうし、銀行同士が競合するなどで立場が弱い場合は、株主側、つまり資本家側の立場が強くなるだろう。力関係は、状況によって変化する。
なお、安全を指向する債券の保有者や、絶対に回収できるような条件の下に低利の融資を行う銀行なども経済全体から見ると「リスクを取りたくない参加者」だ。
彼らが諦めたリターンを、リスクを取ってもいいと思って資本を提供している資本家が手にする。
経済は「適度なリスクを取る者」にとって有利にできている。大事なことなので覚えておけ。
資本家をカモにする「労働者タイプB」の出現
先の図2には、単に「労働者」ではなく「労働者タイプA」という表記があった。実は、まだ少数ながら「労働者タイプB」が存在するのだ(図3)。
●図3
彼らは「経営ノウハウ」、「複雑な技術」、「財務ノウハウ」など、資本家が理解できない「Black Box」を会社の中に作って自らの立場を強くして、主に「株式性のリターン」の形で、本来なら資本家に帰属したかもしれない利益を巻き上げていく。
高額な報酬を取るアメリカ企業の経営者などがその典型だ。現代は、資本家も油断できない時代なのだ。
労働者タイプAには、①他人と取り替え可能な同じような人材になる、②会社が用意した働き方だけで満足する、③雇用や賃金減少のリスクを極端に嫌う、などの特色がある。
こうした人材になると、会社に対する立場と交渉力が弱くなり、会社の言いなりに能力の割に低賃金で働かざるを得ない。実質的に「使い捨て」されることも珍しくない。
正社員としてそこそこの会社に入社することができると、非正規労働者よりも給料が少しいいかもしれないし、クビにはなりにくいが、その立場に安住すると、一生を通じて会社の奴隷のような存在になる可能性が大きい。いわゆる「社畜」だ。
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