稼がない主夫になった「昭和の男」が直面した苦難 自分は妻より"下"な気がする・・・?

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アメリカ滞在中、家族旅行でモニュメントバレーを訪れたときの一枚。撮影は真美子さん。悩んだこともあったが、海外での家族の楽しい思い出もたくさん作れたそう(写真提供:一禎さん)

24時間365日、ご機嫌ではいられないから

いろんなご家族を取材してきた私は、「抱えている悩みやストレスの情報をパートナーに共有する」というのは、つかれない家族を作るうえで大事なことだと思うようになりました。なぜかというと、理由も言わず、ただイライラしたり、不機嫌になったり、疲れていたりすると、パートナーはどう対処していいかがわからず、そのストレスは家族に連鎖し、家庭によくない空気が生まれるからです。

妻に稼がれる夫のジレンマ ――共働き夫婦の性別役割意識をめぐって (ちくま新書 1773)
今回登場してくれた小西さんの著書でも現代男性の惑いについて描かれています『妻に稼がれる夫のジレンマ ――共働き夫婦の性別役割意識をめぐって(ちくま新書)』。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

たとえば、どちらかの家事育児が手抜きになっていたときも、その背景に「仕事でこういうトラブルやストレスがあって疲れている」とか理由がわかってそうなっているのと、何の説明もなくそうなっているのでは、パートナーの感じ方がかなり変わります。もちろん、言いたくないこともあるのは当然なので、何もかも話さなくてもいいのですが、ある程度の共有は必要です。

ですが「人に弱みを見せるのはよくないこと、かっこ悪いこと」と無意識に思い込んでいる人がかなりの割合でいて、特に男性に多いような気がしているのです。でも、その思い込みは、時にパートナーシップの歪みを作り、個人の生きづらさを作り出してしまいます。

人は誰しも、24時間365日、ご機嫌でいることはできません。長い結婚生活なら、なおさらそうです。「いつも笑顔のお母さん」「いつもかっこいいお父さん」が理想像として語られることもありますが、それを目指しすぎると、必ずどこかでストレスがたまり、悪循環が生まれます。グチを延々と垂れ流しすぎたりイライラをパートナーにぶつけるのは論外ですが、ある程度は「かっこ悪い自分」「弱い自分」を相手に見せて、弱音を吐けるのは、家庭のいいところだと私は思っているのです。

今回のご夫婦は、共に華やかなキャリアを持ち、行動力にあふれ、前例が少ない働き方に挑戦してきたおふたりです。そういうパワーカップルが、悩んだりケンカしたりぶつかったりメンタルダウンしてきたことを告白するのは、社会にとってとても意味のあることのように私は感じました。そして、真美子さんいわく「私はポジティブ思考でこの人はネガティブ思考」というおふたりは、なんだかんだでバランスがいいご夫婦だとも感じたのです。

今後も、一禎さんは、真美子さんにビシバシ突っ込まれながら、そして惑いながら、自分の働き方を模索していくのでしょう。そして、その惑いは、いい意味でとても人間らしく、現代を表しているな、と感じました。

この連載にはサブ・コミュニティ「バル・ハラユキ」があります。ハラユキさんと夫婦の問題について語り合ってみませんか? 詳細はこちらから。
ハラユキ イラストレーター、コミックエッセイスト

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はらゆき / Harayuki

雑誌、書籍、広告、Webなどの媒体で執筆しつつ、コミックエッセイの著書も出版。2017年から約2年間バルセロナに住んだことをきっかけに、海外取材もスタートさせる。著書に『女子が踊れば!』 (幻冬舎)、『王子と赤ちゃん』(講談社)、『オラ!スペイン旅ごはん』(イースト・プレス)、この連載を書籍化した『ほしいのはつかれない家族』(講談社)など。この連載のオンライン・コミュニティ「バル・ハラユキ」も主宰し「つかれない家族をつくる方法」を日々探求、発信中。ハラユキさんのHPはこちら

 

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