24時間365日、ご機嫌ではいられないから
いろんなご家族を取材してきた私は、「抱えている悩みやストレスの情報をパートナーに共有する」というのは、つかれない家族を作るうえで大事なことだと思うようになりました。なぜかというと、理由も言わず、ただイライラしたり、不機嫌になったり、疲れていたりすると、パートナーはどう対処していいかがわからず、そのストレスは家族に連鎖し、家庭によくない空気が生まれるからです。
たとえば、どちらかの家事育児が手抜きになっていたときも、その背景に「仕事でこういうトラブルやストレスがあって疲れている」とか理由がわかってそうなっているのと、何の説明もなくそうなっているのでは、パートナーの感じ方がかなり変わります。もちろん、言いたくないこともあるのは当然なので、何もかも話さなくてもいいのですが、ある程度の共有は必要です。
ですが「人に弱みを見せるのはよくないこと、かっこ悪いこと」と無意識に思い込んでいる人がかなりの割合でいて、特に男性に多いような気がしているのです。でも、その思い込みは、時にパートナーシップの歪みを作り、個人の生きづらさを作り出してしまいます。
人は誰しも、24時間365日、ご機嫌でいることはできません。長い結婚生活なら、なおさらそうです。「いつも笑顔のお母さん」「いつもかっこいいお父さん」が理想像として語られることもありますが、それを目指しすぎると、必ずどこかでストレスがたまり、悪循環が生まれます。グチを延々と垂れ流しすぎたりイライラをパートナーにぶつけるのは論外ですが、ある程度は「かっこ悪い自分」「弱い自分」を相手に見せて、弱音を吐けるのは、家庭のいいところだと私は思っているのです。
今回のご夫婦は、共に華やかなキャリアを持ち、行動力にあふれ、前例が少ない働き方に挑戦してきたおふたりです。そういうパワーカップルが、悩んだりケンカしたりぶつかったりメンタルダウンしてきたことを告白するのは、社会にとってとても意味のあることのように私は感じました。そして、真美子さんいわく「私はポジティブ思考でこの人はネガティブ思考」というおふたりは、なんだかんだでバランスがいいご夫婦だとも感じたのです。
今後も、一禎さんは、真美子さんにビシバシ突っ込まれながら、そして惑いながら、自分の働き方を模索していくのでしょう。そして、その惑いは、いい意味でとても人間らしく、現代を表しているな、と感じました。
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