社内からは「そこまでやらなくても」という声もあがったそうだが、会長である山本梁介氏の決断は揺るがなかった。返金理由は、「枕が合わない」「マットレスが硬い」「音が気になって眠れない」等々……。スーパーホテルはそれらの声にしっかりと耳を傾け、1つひとつ、改善していったという。
対応策を聞けば、枕とマットレスは前述の通りだが、音に関しては、建物のリフォームにまで踏み込んだそうだ。とはいえ、最初からマンションの躯体を参考に設計したため、隣室からの声は漏れていなかったのだとか。窓外や廊下からの声が漏れ聞こえていたという。
「そこで、窓はペアガラスにして二重に。廊下からの声は、ドアの四隅の隙間から入るため、ゴムパッキンをして隙間をなくしました。冷蔵庫のジーンという音が気になる方もいたので、静音タイプに変えました」
このような積み重ねの結果、客室の音は今、図書館並みのデシベル数値になっているそうだ。
保証制度を利用した返金は今も月に10万円ほどある。しかし、その理由のほとんどは、予期できない設備故障などによるもの。「眠れなかった」という声はなく、反対に、「ぐっすり眠れた。スーパーホテルはさすがだね」という称賛を数多くもらうという。
「ファンミーティング」に840名の顧客を集める原動力
「この結果から考えれば、月200万円は、スーパーホテルにとって有効な投資でした」と言い切る星山氏。ゲストからの声を基に、本当の意味で「安全・清潔・ぐっすり眠れる」環境を実現するために必要だったのだ、と。とはいえ、当初は星山氏も懐疑的だったそうだ。だが、ゲストの指摘を受けどんどん改善していくさまに、圧倒された。
この取り組みがやがて「ぐっすり研究所」の設立につながり、眠りを追求するさまざまなサービスの開発につながっていったのだ。コンセプトを掲げても、ここまで本気で実現しようとする企業は、そうはいないのではないか。ホテル業界内外にかかわらず。
たとえそれが非常識でも、大きな出費であっても、遂行する真摯な姿勢。それが、「ファンミーティング」に840名もの顧客を集める原動力になっているのだ。
後編では、さらに非常識な「3大革命」について紹介する。
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