異様に眠れる人気ビジホ・スーパーホテルの実態 月額200万円のクレーム保証で顧客の声を聞く

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さらには眠りやすい音楽まで、ピアニストに依頼して独自に制作。香りにおいても工夫している。リラックス効果を狙い、岐阜県産のヒノキのオリジナルアロマでロビーを満たしているのだ。しかもこのアロマ、なぜかコロナ禍明けから評判が急上昇中なのだとか。

「昨年10月に行われた第1回のファンミーティングでも、ホテルの好きなところとしてアロマを推してくださるお声が多くありました。『スーパーホテルに帰ってきた気がする』『自然の森に入ったようでぐっすり眠れる』などで、これは私達にも予想外でした。だから今社内はヒノキブームで(笑)。商品化も考えています」(星山氏)

岐阜県東白川村産のヒノキを使ったアロマディフューザー(写真:スーパーホテル提供)

これら眠りへのアプローチによる集客効果は、正確な数値としては出せない。だが、ファンからの「ぐっすり眠れるのはスーパーホテル」という声やクチコミから、日々実感しているという。

さらに、「睡眠への関心は、年々高まっていると感じています」と星山氏。国内の睡眠に対する意識調査では、半数以上が「悩みを抱えている」と回答した結果も出ているという。

月200万円! 驚きの「品質保証宣言」

ここまで眠りにこだわる理由は、スーパーホテルの成り立ちにも関係している。スーパーホテルは1890年、山重商店という繊維商社として、大阪・船場に誕生。そして1970年、関西を中心にシングルマンションの経営を開始した。このマンションのノウハウをホテルに転用できるのではと考え、1996年、第1号となる「スーパーホテル博多」を開業した。

当時は今のように「宿泊特化型」と呼ばれるホテル形態がなく、フルサービスのラグジュアリーホテルか旅館が主流。出張するビジネスパーソン向けの手軽なホテルはあまりなかった。そこで、彼らをターゲットに据えて、シングルマンション並みのくつろぎを起点に考えたとき、「安全・清潔・ぐっすり眠れる」がコンセプトとなったのだ。

奥湯河原の源泉の天然温泉が魅力の「Premier銀座」(写真:スーパーホテル提供)

このコンセプトを叶えるために導入した取り組みの1つに、「品質保証宣言」がある。

その内容は驚くべきもの。滞在中に「安全・清潔・ぐっすり眠れる」が実感できなければ、宿泊料金を全額返金するというのだ。入室してすぐなら、客室チェンジでの対応も可能だ。

「保証をはじめたのは2005年からで、今年で19年が経ちます。でも10年以上こんな取り組みを続けているのは弊社だけではないでしょうか。当時は毎月、グループ全体で200万円の返金がありました」と星山氏は苦笑いする。

次ページ社内からは「そこまでやらなくても」という声も
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