買収した富豪もお手上げ「大手メディア」の惨状 デジタルで復活に期待も、赤字のオンパレード

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タイムの広報担当者は、CEOのジェシカ・シブリーが読者数と広告収入は増えていると述べた従業員宛てのメモを引用し、2023年の財務状況についてはコメントを控えた。オーナーのベニオフは、シブリーは「素晴らしいビジョンに基づき、多くのエキサイティングな変化」を起こしていると声明で述べている。

富豪たちが足を突っ込んだ想定外の消耗戦

富豪がオーナーとなった老舗報道機関の中には、少数ながら経営が持ち直したところもある。ボストン・レッドソックスのオーナー、ジョン・W・ヘンリーが2013年にニューヨーク・タイムズ・カンパニーから7000万ドルで買収したボストン・グローブは、同社の財務に詳しいある人物によると、何年にもわたって黒字を出しており、その利益はグローブに再投資されているという。

ローレン・パウエル・ジョブズが2017年に買収した総合誌『アトランティック』は、デジタルと紙を合わせた購読者数を100万人にして黒字化する目標を掲げる。アトランティックはまだ黒字化には至っていないが、購読者数は昨年夏時点で92万5000人を上回ったと発表している。

各社が直面する困難は厳しくなる一方だ。グーグルをはじめとする検索エンジン経由のアクセスが減り、多くのニュース媒体のウェブトラフィックは減少している。さらに、人工知能(AI)を搭載した新しいアプリケーションの台頭により、読者数が一段と減るおそれもある。

アナリストでメディア起業家のケン・ドクターは、ニュースメディアを買収した富豪たちには「消耗が広がっている様子」が見てとれると指摘する。彼らを消耗させている課題には、「ニュースに不安を感じて避ける動きや、広告収入をめぐる熾烈な競争」といったものが含まれる。

「富豪のオーナーたちは、何年にもわたって資金を失い続けるのはかなりきついことだということに気がついた」とドクターは言う。「彼らには、その余裕がないわけではないのだが」。

(執筆:Benjamin Mullin記者、Katie Robertson記者)
(C)2023 The New York Times

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